「知識深め正しい保全を」 奄美市で生物多様性シンポ

水辺の生き物と環境保全について研究者が意見を出し合ったシンポジウム=16日、奄美市名瀬

水辺の生き物と環境保全について研究者が意見を出し合ったシンポジウム=16日、奄美市名瀬

 2018年鹿児島大学生物多様性シンポジウム「奄美群島の海と川の生き物たち―未来に残したい宝物」が16日、奄美市名瀬のAiAiひろばであった。鹿大の教授ら6人が研究成果を報告。総合討論では外来種の放流や整備事業による環境変化などを問題視し、「守るべき自然を知らなければ本当の保全はできない。知識と議論を深めてよりよい選択をしていこう」などと提言した。

 鹿大国際島嶼教育センター奄美分室が開設された15年から続く「薩南諸島の生物多様性と、その保全に関する教育研究拠点整備」プロジェクトの一環。一般市民ら84人が来場した。

 水産学部准教授の久米元氏は奄美大島だけに天然の個体が残る絶滅危惧種のリュウキュウアユについて報告。島北部の川に定着した外来の魚類に関して「アユの生息域に流入すれば餌の競合が考えられる」と指摘した。

 水産学部の山本智子教授は、水や砂の中の有機物を餌とするカニや貝などの生き物を「自然のフィルターのような存在」と表現。「奄美群島は九州以北の生き物と奄美を北限とする生き物が混ざり合う貴重な環境」と保全の重要性を説いた。

 国際島嶼教育研究センター奄美分室の藤井琢磨特任助教は内湾に生息するサンゴに注目。「水が濁りがちで住民の関心は低いが、この環境だからこそ生息できる希少なサンゴがある。自然度の高い内湾環境が残っていることも奄美が誇るべき財産だ」と語った。

 鹿大大学院連合農学研究科の寺田竜太教授は、世界の海草(海中に生育する種子植物)約60種のうち奄美群島では14種が確認できると報告。井戸や水くみ場などで見られる希少な淡水紅藻類についても触れ、「生活の場に共にあった存在をこれからも守り続けてほしい」と話した。

 鹿大総合研究博物館の本村浩之館長は、近年の外来稚魚放流が奄美大島周辺海域に生息する固有種のタイ「ホシレンコ」の生態に影響を与えると警鐘を鳴らした。

 水産学部の鈴木廣志教授は奄美群島の汽水域、淡水域に生息するエビについて、地史的な変遷と黒潮の影響で固有種、北限種、南限種が多く存在すると解説。産卵場所が解明されていないものや雌しか見つかっていないものなど、身近にいる謎めいた生き物たちの魅力を語った。

 登壇した6人と来場者の総合討論では「研究不足で激減させてしまった生き物もいる。環境保全には知識を深めることが重要」「護岸整備など必要な事業に対して、環境への影響など各専門家が多角的に検証し議論すべき」などの提言があった。