自然と文化、奄美は一体管理を 世界遺産セミナー、専門家が提言

オンラインで開催された奄美の世界遺産セミナー=19日

オンラインで開催された奄美の世界遺産セミナー=19日

 日本自然保護協会主催の「奄美の世界遺産セミナー」が19日夜、オンラインで開かれた。今年夏の世界自然遺産登録を目指す奄美大島の自然と文化、地域遺産(シマ遺産)をテーマに専門家らが講演。筑波大学大学院の吉田正人教授(世界遺産学)は奄美の自然と文化の関わりの重要性を強調し、「自然と文化が一体となった管理計画を立てるべき」と提言した。

 

 セミナーでは吉田教授と早瀬穂奈実さん(環境省奄美野生生物保護センター)、喜友名正弥さん(奄美市立奄美博物館)が講演した。

 

 吉田教授は複合遺産として推薦されたカナダの先住民の集落と森林が登録延期となったのを機に、国連教育科学文化機関(ユネスコ)と諮問機関が近年、自然と文化の関係について見直す動きがあると説明。国内では世界自然遺産になった白神山地や屋久島で登録後、それぞれの自然に注目が集まる一方で、「地域の文化的価値への関心が薄れていった」と指摘した。

 

 世界自然遺産を目指す奄美の課題に、観光客が特定の地域に集中する過剰利用(オーバーユース)を挙げ、保全管理計画に基づいて利用人数や滞在時間などを規制するなど、来訪者の管理策を提案。

 

 屋久島で遺産登録後に進められた住民が集落などを案内する「里めぐりツアー」の取り組みなどを紹介し、「世界遺産には自然遺産と文化遺産の区別があるが、奄美では自然と文化は切り離せない。地域の人々が自然と文化が一体となった地域(シマ)遺産を忘れず、評価することが大切だ」と呼び掛けた。

 

 早瀬さんは固有種や絶滅危惧種も含め多様な動植物が生息する奄美大島の魅力と、野生生物の保護や、観光客の増加に対する利用規制などの取り組みを紹介。「奄美の自然は島人の宝。遺産の価値を守り、地域を生かす自然遺産を目指したい」と話した。

 

 喜友名さんは「奄美世」と呼ばれる先史時代から、近世の薩摩藩統治時代の「大和世」に至る奄美の歴史をたどり、遺跡から出土した遺物や地域に残る伝承などを紹介。八月踊りや集落の祭り、島唄などを取り上げ、奄美の文化や人の暮らしの様子を紹介した。