ノネコ管理計画を策定 奄美大島の森林内から排除へ 環境省、県、島内5市町村

2018年03月29日

旧県立大島工業高校敷地内で整備が進むノネコの一時収容施設=28日、奄美市名瀬

旧県立大島工業高校敷地内で整備が進むノネコの一時収容施設=28日、奄美市名瀬

  世界自然遺産候補地の奄美大島で、野生化した猫(ノネコ)が国の特別天然記念物アマミノクロウサギなど希少な在来生物を襲って生態系を脅かしている問題で、環境省、県、島内5市町村は28日、ノネコの管理計画を策定した。山中でノネコを捕獲し、施設に収容して譲渡先を探した上で、引き取り手が見つからない場合は「安楽死」の処分を行う。ノネコの元になる野良猫の増加を防ぎ、飼い猫の適正飼養を推進する取り組みも並行して進め、島独自の生態系の保全を目指す。

 

 管理計画は、亜熱帯照葉樹の森に固有種や絶滅危惧種も含め多様な在来生物が生息する奄美大島で近年、ノネコによる希少種の捕殺が相次いで確認され、生態系に被害を及ぼす脅威となっていることを受けて、関係機関が生態系の保全を目的に共同で策定した。

 

 計画期間は2018年度から27年度までの10年間。ノネコを捕獲して希少種の生息する森林内から排除するとともに、野良猫に不妊去勢手術を施すTNR事業や、5市町村の条例に基づく飼い猫の適正飼養の取り組みを進める方針だ。

 

 奄美大島の森林部の猫の推定生息数は600~1200匹。計画では、捕獲は環境省が担い、初年度は300~360匹を見込む。捕獲後は奄美市名瀬の一時収容施設で保護し、譲渡先が見つからない場合は1週間をめどに処分する。

 

 施設は旧県立大島工業高校敷地内で今月中に完成し、4月中旬ごろに運用が始まる見通し。運営は島内5市町村でつくる奄美大島ねこ対策協議会が担う。収容数は約50匹。同省は施設の運用開始後にノネコの捕獲を始める。

 

 捕獲が始まると、ノネコ以外に森林内にいる野良猫や飼い猫も捕獲される可能性がある。捕獲された個体が各市町村に登録して交付された鑑札を付けていたり、マイクロチップを装着している場合は飼い主へ引き渡す。首輪をしている場合は地元役場で1週間公示して飼い主を探す。所有者が判明しなければ県が引き取るとしている。

 

 環境省奄美自然保護官事務所の岩本千鶴自然保護官は管理計画について「計画に沿ってしっかり対策を進めたい。捕獲されるノネコを増やさないためにも、飼い猫は室内で飼ってもらいたい。捕獲開始後は譲渡への協力をお願いしたい」と呼び掛けた。