リュウキュウアユ存続危機 奄美大島

2019年06月16日

奄美大島のリュウキュウアユの減少について語る奄美リュウキュウアユ保全研究会=15日、鹿児島市

奄美大島のリュウキュウアユの減少について語る奄美リュウキュウアユ保全研究会=15日、鹿児島市

 奄美大島に唯一生息する天然のリュウキュウアユの個体数が、2018年春の5万6733匹から19年春は3499匹にまで激減し、調査を開始した06年以降、過去最低だったことが分かった。奄美リュウキュウアユ保全研究会(会長・四宮明彦元鹿児島大学教授)が15日、鹿児島市で発表した。「昨冬の海水温の上昇が仔稚魚の生存率を低下させたのが主要因」とみている。

 

 リュウキュウアユは毎年秋ごろ川で産卵。生まれた仔稚魚は海に流され育ち、春に再び川へ上ってくる。同会は19年5月16~17日、奄美市、宇検村、龍郷町、瀬戸内町の14河川で、上ってきた仔稚魚数をシュノーケリングで目視調査した。

 

 それによると、全河川で著しく少ないことが分かり、主な産卵場所では▽役勝川(奄美市)1639匹▽川内川(同)50匹▽住用川(同)1710匹▽河内川(宇検村)31匹―だった。同会は「川内川と河内川は個体群の存続が危惧される」と警鐘を鳴らしている。

 

 主な原因として考えられるのは地球温暖化による海水温の上昇。仔稚魚は高水温に対して耐性が低い。名瀬測候所が発表した18年12月~19年3月の平均気温は約17度で、前年同期の15・5度を約2度上回った。同会はこの影響で海にいる仔稚魚の生存率が低下し、川へ遡上する個体数を激減させたとみている。

 

 また近年、川沿いでリュウキュウアユを捕食する鳥類・カワウが増加。産卵場所が狙われることもあり、専門家を招いた対策も検討している。

 

 今後は産卵場所となる河川の工事は、川を濁さずに行うよう関係機関に協力を依頼し、今年は個体数減少防止のため、リュウキュウアユのサンプル採取は認めないことなどを決めた。

 

個体数が激減していることが分かった奄美大島のリュウキュウアユ

個体数が激減していることが分かった奄美大島のリュウキュウアユ

 リュウキュウアユは環境省のレッドリストで絶滅危惧ⅠA類に位置付けられ、県も条例で希少種に指定し保護している。

 

 特に奄美大島のリュウキュウアユは、東シナ海側と太平洋側で遺伝子が異なる。そのため、東シナ海側の河内川に生息するリュウキュウアユが激減したことについては「貴重な遺伝子をもったアユが消滅する可能性が高い危機的状況」と指摘した。

 

 長崎大学大学院水産・環境科学総合研究科の井口恵一朗教授は「まずは地域の人々に絶滅の危機にあるリュウキュウアユの大切さを理解してほしい」と話している。

 

 同会は7月、同川を中心に再調査を行う。