与論島北部の洞窟で希少なヌマエビ3種発見

2019年09月18日

与論島で見つかった希少なチカヌマエビ(藤田喜久さん提供)

与論島で見つかった希少なチカヌマエビ(藤田喜久さん提供)

 沖縄県立芸術大学と鹿児島大学、琉球大学の研究チームが、与論島北部の洞窟の地下水域で、希少なヌマエビ類3種を発見したことが分かった。3種は同島で初記録。これまでに沖縄県が分布の北限だったチカヌマエビとクラヤミヌマエビ(仮称)の2種は最北限記録となる。今月3日付の日本甲殻類学会誌に論文が発表された。

 

 研究チームは藤田喜久(沖縄県立芸大准教授)、上野大輔(鹿児島大大学院)、鈴木廣志(同大名誉教授)、渡久地健(琉球大)の4氏。

 

クラヤミヌマエビ(藤田喜久さん提供)

クラヤミヌマエビ(藤田喜久さん提供)

 同島那間地区にある洞窟で2017年5月と19年3月に調査を行い、洞窟の深さ約9メートルの底部から約27メートル奥にある地下水域で、チカヌマエビとアシナガヌマエビ、クラヤミヌマエビの3種を採集した。いずれもヌマエビ科で体長1・5~3センチ程度。

 

 チカヌマエビは沖縄島や宮古、八重山諸島に分布。アシナガヌマエビは沖縄、大東、宮古諸島のほか奄美諸島の沖永良部島にも分布。2種はともに環境省のレッドリストで準絶滅危惧種に位置付けられている。

 

アシナガヌマエビ(上野大輔さん提供)

アシナガヌマエビ(上野大輔さん提供)

 クラヤミヌマエビは宮古島だけで生息が確認されていた。新種の可能性があり、宮古島の標本を基にした分類学的研究が進められている。研究チームは今回見つかった与論島の標本も含め「今後の研究の進展が期待される」としている。

 

 3種が見つかった洞窟の地下水域は、潮の干満の影響を受けて水位が変動する「アンキアライン環境」と呼ばれる。鈴木名誉教授は「普段は人目につきにくく、生物多様性の低いと思われるアンキアライン環境の潜在的な資源の豊かさを示す成果」と評価し、「3種は生息数が少なく、生息環境も極めて狭い。地元住民が保全してきた環境をこれからも守っていくことが大事だ」と述べた。