「ウイルス相手では仕方ない」 世界遺産委延期で関係者

2020年04月16日

世界自然遺産

県大島支庁の庁舎に掲げられた「世界自然遺産」啓発の看板=15日、奄美市名瀬

県大島支庁の庁舎に掲げられた「世界自然遺産」啓発の看板=15日、奄美市名瀬

 新型コロナウイルスの感染拡大を受けた国連教育科学文化機関(ユネスコ)の世界遺産委員会延期決定で、世界自然遺産登録が先送りとなった奄美大島や徳之島。自然保護などに取り組み民間団体の関係者らは「今回ばかりは仕方ない」と冷静な受け止めが大方。経済や観光関係者からは「感染症が広がる中での登録では経済効果も限定的になる」と延期の判断に理解を示す声が聞かれた。たび重なる登録延期で、遺産登録に向けた住民の機運低下を懸念する意見もあった。

 

 奄美大島エコツアーガイド連絡協議会の喜島浩介会長(69)は「(前回の推薦取り下げも踏まえ)つくづくタイミングが悪いなと思うが、ウイルスが相手では仕方ない。大事なのは今ある自然、生物多様性をどう後世に残していくか。そこに主眼を置くべきであり、遺産登録の時期や可否に左右されず、そのための取り組みを今後もしていかなければならない」と力を込めた。

 

元東京大学医科学研究所特任研究員の服部正策さん(66)は「世界中がこういう状態なので、延期になるのは当然だろう」と冷静だ。奄美・沖縄の世界自然遺産登録に向けて、専門家として助言する科学委員会委員を務める。登録審査の行方については「IUCN(国際自然保護連合)次第だから分からないが、何があっても、奄美の価値は変わらない」と語った。

 

徳之島虹の会の政武文理事長(67)は「委員会は延期だろうと思っていた。こればかりは仕方がないが、世界自然遺産登録への関心が薄れないか心配。コロナの収束後に委員会で遺産登録が決まり、落ち込んだ経済が回復する起爆剤となることを期待したい」と話した。

 

 経済や観光の関係者らも「想定内」との受け止め。奄美大島商工会議所の有村修一会頭は「致し方ない判断と思う。現状で登録されたとしても旅行など不要不急の外出自粛が続く中では経済的波及効果は限定的だったと推測される。今回の決定を前向きに受け止め、今後も行政機関や関係団体と連携を密にし、登録に向けて努力していく」と述べた。

 

 徳之島観光連盟の重田勝也会長は「感染拡大が続く状況下で登録が決まってもコロナ関連のニュースに埋もれていたと思う。現状では島内の感染防止対策もままならず、島外からお客さんを歓迎するのが難しい。収束のめどが立ってから委員会を開催していただき、吉報を待ちたい」と前向きに語った。