世界自然遺産セミナー 徳之島

2019年02月11日

世界自然遺産

環境保全策について理解を深めた世界自然遺産セミナー=10日、天城町天城

環境保全策について理解を深めた世界自然遺産セミナー=10日、天城町天城

 世界自然遺産セミナーin徳之島(県主催)が10日、天城町防災センターであった。専門家や中学生らが講話や講演、研究発表を行い、奄美・沖縄4島の世界自然遺産登録に向けて自然環境保全の必要性を提言。来場者は徳之島の自然の豊かさを再認識し、ペットの適正飼養やごみ投棄防止など、住民が主体的に取り組むべき環境保全策に理解を深めた。

 

 セミナーは、奄美・沖縄4島の来年の自然遺産登録を目指して政府が1日に国連教育科学文化機関(ユネスコ)へ推薦書を再提出したことを受け、地域の機運醸成や遺産の保全・活用についての意識啓発を兼ねて開催。島内3町から住民と関係機関団体の職員や会員ら約180人が参加した。

 

 伊仙町立面縄中学校1年の具伊爽花さん、田中彩世さん、富岡紅羽さんが自由研究の一環で昨年夏に行った徳之島の生態系調査結果を発表。外来のアメリカハマグルマや野生化した猫(ノネコ)などが生態系に悪影響を及ぼしていることについて「悪いのは外来生物ではなく人間。外来種問題や駆除活動について島民に知ってもらい、みんなで徳之島の自然を守り、未来に残したい」と訴えた。

 

 徳之島保健所の職員は講話でペットの遺棄防止で不妊手術を呼び掛けたほか、土壌や水質への影響からもごみ投棄防止の必要性を示し、「環境問題は将来の住民が被害を受け、観光客に対してもイメージダウンになる。一人一人の取り組みの積み重ねが遺産登録の実現と遺産価値の維持につながる」と述べた。

 

 北海道大学大学院教授の髙木昌興さんが「奄美群島の野鳥を科学的に楽しもう」、㈲屋久島野外活動総合センター代表取締役の松本毅さんが「屋久島におけるエコツーリズムの現状」を題に講演。

 

 髙木さんはアカヒゲやアマミヤマシギなど、奄美群島の固有種について解説し、「生物進化の歴史を見せてくれるのが奄美大島、徳之島の世界自然遺産の価値。いろんな生物を科学的に楽しむことが遺産登録を迎える準備の一つ」と述べた。

 

 松本さんは自然遺産登録後の観光客増で自然環境への負荷が増大したことから、山岳部保全協力金や町条例によるガイド認定制度を創設した事例などを紹介。「観光と保全のバランスを保って自然をうまく利用していくため、エコツーリズムの議論をしてほしい」とアドバイスした。

 

 奄美大島でのセミナーは17日に瀬戸内町で開かれる。