人里と森を往来、希少種捕食 森林総研

2019年11月20日

アマミノクロウサギをくわえた猫=2017年1月、徳之島町(環境省沖縄奄美自然環境事務所提供)

アマミノクロウサギをくわえた猫=2017年1月、徳之島町(環境省沖縄奄美自然環境事務所提供)

 森林総合研究所は19日、徳之島の森で捕獲された猫のふんや体毛を分析した結果、普段は人から餌をもらっている猫が、森に侵入して国の特別天然記念物アマミノクロウサギなどの希少種を捕食している実態が明らかになったと発表した。放し飼いの猫や野良猫が人家周辺と森を行き来しているとして、希少種の保全に向けて「猫の室内飼育の義務化など、適正飼養の徹底が必要」と指摘した。

 

 同研究所と京都大学、㈱奄美自然環境研究センターが共同研究を行い、今月7日付のオンライン国際学術誌「Scientific Reports」に論文を掲載した。

 

 同島は固有種や絶滅危惧種など希少な野生生物が多く生息し、来年夏の登録を目指す奄美・沖縄の世界自然遺産候補地となっている。一方で、山中で野生化した猫(ノネコ)が希少種を捕食する被害によって、生態系への影響が懸念されることから、環境省が森林部で猫の捕獲を進めている。

 

 研究では、同島で捕獲された猫のふんと体毛を採取し、食性を分析。174匹のふんを調べたところ、約2割の個体が捕獲前の数日間に、クロウサギや同島固有のトクノシマトゲネズミなど絶滅危惧種計6種を捕食していたことを確認した。

 

 希少種を捕食していた猫の体毛から、体の組成の約7割がキャットフードに由来していることが分かり、「普段は人の生活圏にいる猫と考えられる」と推察した。

 

 徳之島は、希少種の生息する森と人の生活圏が近く、人家の近くでもクロウサギが目撃されることがある。同研究所は「猫は屋外に出ると侵略的外来種になり、放し飼いや野良猫への餌やりは自然環境にリスクを与える恐れがあると認識すべき」と指摘。

 

 希少種の保全に向けて「森林部の猫の捕獲と合わせて、人の生活圏での適正管理を一体的に進めることが不可欠」と注意喚起している。