国内初記録のサンゴ2種確認 鹿大の藤井特任助教ら 大島海峡などで

2020年11月05日

国内初記録となったツツナガレハナサンゴ(左)とツツコエダナガレハナサンゴの群体(藤井特任助教撮影)

国内初記録となったツツナガレハナサンゴ(左)とツツコエダナガレハナサンゴの群体(藤井特任助教撮影)

 瀬戸内町の大島海峡などで国内初記録の有藻性サンゴ類2種が見つかった。ハナサンゴ科ナガレハナサンゴ属の2種で、ほかに同科オオナガレハナサンゴ属1種の琉球列島初記録となる分布も確認。比較的濁りが強い内湾砂泥底や薄暗い水深30メートル以深など、いずれも光の届きにくい海域で見つかっており、調査研究が不十分な海域に潜在する生物多様性を示唆しているという。

 

 鹿児島大学の藤井琢磨特任助教と国立環境研究所の北野裕子特別研究員らの共同研究で明らかになった。日本動物分類学会が発行する国際学術誌に論文が掲載され、10月28日付のオンライン版で公開された。

 

琉球列島初記録となったオオナガレハナサンゴの群体(藤井特任助教撮影)

琉球列島初記録となったオオナガレハナサンゴの群体(藤井特任助教撮影)

 3種はいずれも有藻性サンゴ類の一群。国内初記録となる2種はハナサンゴ科ナガレハナサンゴ属で、軟体部の一部を筒状に伸ばす特徴から「ツツナガレハナサンゴ」、「ツツコエダナガレハナサンゴ」と和名を付けた。琉球列島での初記録1種は同科オオナガレハナサンゴ属のオオナガレハナサンゴ。

 

 これまでツツナガレハナサンゴは台湾、ツツコエダナガレハナサンゴは中東の紅海が北限とされ、日本国内に証拠標本を伴う分布記録はなかった。オオナガレハナサンゴは九州以北や東南アジアで確認されていたが、琉球列島での分布記録がなかった。

 

 3種はいずれも瀬戸内町の大島海峡中央部付近で発見。ツツナガレハナサンゴは奄美市住用町の住用湾や沖縄県・宮古諸島の大神島付近、ツツコエダナガレハナサンゴは沖縄本島北部の大浦湾でも分布を確認した。いずれも水深30メートル以深の薄暗い海域。特に流れが比較的穏やかな大島海峡の発見場所は、海底に砂泥が堆積していて濁りやすく、光が届きにくい環境となっている。

 

 今回の研究成果について、藤井特任助教は「調査不足により生物多様性が適正に評価されていない海域の存在が示唆された」とし、オオナガレハナサンゴが分布の局所性、希少性から環境省のレッドリストで絶滅危惧Ⅱ類に指定されていることに触れ「今後は分布と合わせて生息環境の調査も進め、種の保存につなげていく必要がある」と語った。