奄美の植物研究成果を紹介 鹿大の鵜川氏、川西氏 ワイルドライフセミナー

2021年02月22日

奄美の調査研究について対談した(左から)川西氏と鵜川氏=20日、奄美市名瀬

奄美の調査研究について対談した(左から)川西氏と鵜川氏=20日、奄美市名瀬

  環境省奄美野生生物保護センターなど主催の「あまみワイルドライフセミナー」が20日夜、オンラインで開かれた。「奄美植物研究への誘い」をテーマに鹿児島大学の研究者2人が講演し、最新の研究成果を紹介。これから奄美大島で展開する固有の動植物のモニタリング調査について、「研究者だけでなく、地域の人が参加することが重要」と呼び掛けた。

 

 鹿大の鵜川信准教授と川西基博准教授が奄美市名瀬の鹿大国際島嶼(とうしょ)教育研究センター奄美分室で講演し、オンラインで約50人が視聴した。

 

 鵜川氏は「徳之島における天然林の維持機構」と題して講演。奄美大島と徳之島に生息する多様な固有種を保全するために、「森林の多様性を守ることが重要」と強調。徳之島の天城町三京の調査から、森林の多くを占めるスダジイとオキナワウラジロガシの分布が尾根や斜面、谷などの地形によって異なるとして、「すみ分けを行い競争を避けている。進化の過程で獲得した生存戦略の違いによって共存している」と考察した。

 

 ウラジロガシはスダジイよりも長く生存することで、個体群を維持しているとして、「伐採すると再生には膨大な時間がかかる。現状を維持することが固有種保全のポイントになる」と述べた。

 

 「奄美大島の河川沿いにおける森林の伐採履歴と種多様性」と題して講演した川西氏は、陸域から水域に移行する河川周辺は多様な植生が成立するため、「奄美大島の植物の多様性を理解する上で重要」と強調。

 

 奄美大島の森林は戦前戦後の開墾で伐採が進み、1960~70年代のチップ生産で大規模な伐採が行われた。同島の住用川と役勝川の流域を記録した空中写真から、周辺の森林の伐採の歴史と分布する植物の種類の違いを分析。伐採が行われた流域はヒカゲヘゴなど日が当たる環境を好む種類が多く、着生植物の減少が顕著だった。一方、伐採されなかった場所はシイの巨木や多様な着生植物が見られ、絶滅危惧種の密度も高かった。

 

 伐採後に再生した二次林でもアマミセイシカなど絶滅の恐れのある固有種が確認され、「保全上、無視できない林分といえる」と述べた。

 

 講演後、奄美野生生物保護センターの職員を交えて奄美大島での調査研究について対談した。