偉大な功績誇りに 継承が課題 生誕140年・没後60年記念 昇曙夢シンポジウム 奄美市名瀬

研究者らが昇曙夢の功績を紹介したシンポジウム=28日、奄美市名瀬

研究者らが昇曙夢の功績を紹介したシンポジウム=28日、奄美市名瀬

 瀬戸内町加計呂麻島芝出身の昇曙夢の生誕

140年と没後60年を記念したシンポジウムが28日、奄美市名瀬の県立奄美図書館であった。島内外の研究者ら5人が講演。ロシア文学者、奄美群島日本復帰運動の指導者、民俗学者と三つの側面から曙夢の足跡をたどり、奄美と日本に影響を与えた功績を後世に伝えることの大切さを訴えた。

 

 曙夢(1878~1958、本名・直隆)は東京の神学校でロシア語を学び、ロシア文学研究の傍ら翻訳集などを出版。奄美の日本復帰運動に尽力し、「大奄美史」を著した。

 

 シンポジウムは昇曙夢研究家の和田芳英氏=奄美市名瀬出身、京都府在住=を中心に島内外の有志が実行委員会を組織して開催。地域住民ら約100人が来場した。

 

 講演した伊東一郎氏(早稲田大学文学学術院教授)はロシアの民話や伝説、民謡などを収めた曙夢の「露國民衆文学全書」(1918~20年、大倉書店)を取り上げ、「奄美の豊かな民俗文化や自然に囲まれて育ったことに大きな意味があった」と強調。

 

 「ロシアは古来、口頭で伝わる文学が盛ん。曙夢は同時代のロシアの近代、現代文学を訳したことで耳目を引いたが、背後には豊かな民衆文化への理解がある。単なる文学の翻訳者でなく、民衆文化に深い関心、知識を持って翻訳したことを忘れてはいけない。そんなロシア文学者は現れなかった」と曙夢の功績を高く評価した。

 

 和田氏、北之園千春氏(前県立奄美図書館長、現中種子町教育長)、財部めぐみ氏(鹿児島大学講師)、先田光演氏(えらぶ民俗郷土研究会会長)らは曙夢の生い立ちや、復帰運動家、民俗学者としての活動について講演。

 

 財部氏は加計呂麻島で子どもたちに曙夢の業績を伝える地元住民の取り組みを紹介し、「故郷奄美に軸足を置きながら、日本、世界に羽ばたいた偉人がいたことを誇りに思う。その誇りを若い人につなげることがこれからの課題」と述べた。