島尾ミホ生誕100年記念講演会

(右から)高校生らを前に島尾ミホの作品について対談した豊崎氏、藤井氏=13日、奄美市名瀬

高校生らを前に島尾ミホの作品について対談した(右から)豊崎氏、藤井氏=13日、奄美市名瀬

 作家島尾敏雄(1917~86年)の妻で作家のミホ(1919~2007年)=瀬戸内町出身=の生誕100年記念講演会が13日、奄美市名瀬の集宴会施設であった。書評家の豊崎由美氏と奄美市出身の作家藤井太洋氏が島尾ミホ文学をテーマに対談。地元の高校生と一般約350人を前に「巧みな情景描写、人物描写が魅力。文豪の妻や作品のモデルとしてだけではなく、一人の作家として再評価されるべき」などと語った。

 

 島尾ミホは1919年、瀬戸内町加計呂麻島出身。太平洋戦争中、同島に第18震洋隊の隊長として駐屯した島尾と出会い、結婚した。島尾の代表作である「死の棘」をはじめ多くの作品で登場人物として描かれた一方、自身も小説「海辺の生と死」や「愛の棘」、「祭り裏」などを執筆した。

 

 講演は豊崎、藤井両氏の対談形式で進行。豊崎氏はミホの小説から当時の奄美の暮らしなどを推測し、「独特の文化と自然環境を持つ奄美で育ったことが作家としての土台になった」と指摘。「眼前に迫るような力強い描写力とともに、方言と標準語を織り交ぜるなど斬新な技法にも注目したい」と高く評価した。

 

 藤井氏は「ルーツに異なる文化や言語を持つことは作家としての強み」と述べ、「地方出身ということが武器になる時代。東京育ちの作家を悔しがらせるような作品を奄美から生み出してほしい」と来場者へ呼び掛けた。

 

 藤井氏は奄美市名瀬出身。2012年に電子書籍「Gene Mapper」で作家デビューし、13年に「オービタル・クラウド」で第35回日本SF大賞と第47回星雲賞日本長編部門を受賞。19年には作品集「ハロー・ワールド」で第40回芳川栄治文学新人賞を受賞している。

 

 講演会は奄美市の人材育成等研修助成事業を活用。同講演会実行委員会(橋口耕太郎会長)が主催し、大島高校の1年生と教諭ら約300人を招待した。大島高校の生徒(16)は「読書は話題になった映画の原作を読む程度。ミホさんや藤井さんの本を読んでみたくなった」と話した。