伝統のアラセツ行事、豊作祈る 龍郷町秋名・幾里

2019年09月07日

芸能・文化

「ヨラ、メラ」の掛け声で「ショチョガマ」を揺らす男衆=6日午前6時半ごろ、龍郷町秋名

「ヨラ、メラ」の掛け声で「ショチョガマ」を揺らす男衆=6日午前6時半ごろ、龍郷町秋名

 龍郷町の秋名・幾里地区に伝わるアラセツ(新節)行事の「ショチョガマ」「平瀬マンカイ」が6日、同地区の山腹と海辺であった。平日の開催にもかかわらず今年も多くの住民や観光客が訪れ、ニャダマ(稲霊)を招き豊作を祈願する伝統の祭りを見守った。

 

 秋名アラセツ行事は、収穫に感謝し来年の五穀豊穣(ほうじょう)を祈る稲作儀礼。戦中戦後に一時途絶えたが、1960年に保存会が復活させた。85年には国の重要無形民俗文化財に指定されている。

 

 夜明け前の午前6時ごろ、集落と田袋を見下ろす山の中腹に立てたショチョガマ(片屋根のわらぶき小屋)でチヂン(太鼓)が打ち鳴らされ、祭りが始まった。宮司が祝詞を唱えた後、屋根に上がった男衆約80人が、豊作を願って「ヨラ、メラ」の掛け声で屋根を揺さぶった。

 

 午前6時半すぎ、北側へ小屋が倒されると周囲から歓声が上がり、住民らが小屋の上で八月踊りを歌い踊った。保存会によると、ショチョガマはどの方角に倒れても来年の豊作が期待できるという。

 

 平瀬マンカイは午後4時すぎから海岸の二つの岩の上で行われた。しめ縄が巡らされた沖側の「神平瀬」にノロ役の女性5人、集落側の「メラベ(女童)平瀬」にノロの補佐役の男女7人が上がって向かい合い、唄の掛け合いと手踊りを繰り返して海のかなたの楽園・ネリヤカナヤの神々に祈りをささげた。

 

 行事は事前準備から集落内外のボランティアが運営を支えた。秋名アラセツ行事保存会の窪田圭喜会長(78)は協力者に感謝を述べ、「アラセツ行事は地域の文化の原点。最近は20~30代の若手の参加も増え、盛り上がっている。集落だけでなく、町全体を活気づけるため、伝統を守っていきたい」と話した。

 海のかなたの神々に五穀豊穣を祈る「平瀬マンカイ」=6日午後4時ごろ、龍郷町秋名

海のかなたの神々に五穀豊穣を祈る「平瀬マンカイ」=6日午後4時ごろ、龍郷町秋名