区長自らトネヤ再建 瀬戸内町須子茂

2019年02月08日

芸能・文化

トネヤの再建に取り組んでいる元永区長=1月26日、瀬戸内町の須子茂集落

トネヤの再建に取り組んでいる元永区長=1月26日、瀬戸内町の須子茂集落

 瀬戸内町加計呂麻島の須子茂集落(14世帯21人)で、区長の元永孝則さん(60)がトネヤを再建している。同集落にはノロの祭りに使用される建物「アシャゲ」と「トネヤ」が2棟ずつあったが、うち1棟のトネヤが1996年に焼失していた。元永区長は「昔ながらのシマの姿を次の世代に残したい」と思いを語った。

 

 トネヤとアシャゲは「ノロ」が祭祀(さいし)を行う神聖な建物として、集落の広場「ミャー」に建てられる。住民によると、須子茂集落には西側の「ナハマ」と東側の「アナタリ」の2カ所にそれぞれミャーがあり、昭和40年代までノロが祭祀を行っていたという。

 

 再建するのはアナタリのトネヤで、木造平屋のトタン屋根、幅280センチ、奥行き270センチ、高さ255センチ。建築費用のうち30万円は町の地域提案型事業を活用。残りは住民らで負担する。

 

 元永区長はバスドライバー歴30年のベテラン運転士。大工として働いた経験は無く、「元々好きだったこともあり、島で生活するために見よう見まねで覚えた」。

 

 車のハンドルをノミやのこぎりに持ち替え、仕事の休みを利用して作業を進める。「なるべく昔のままの姿で残したい」という思いから、釘を使わない建築方法にこだわっている。

 

 2016年に住民らが資金を出し合って建て替えたナハマのアシャゲも元永区長が担当した。「一つの集落に2カ所のミャーが残るのは今は須子茂だけ。われわれにとっては懐かしい風景であり、昔の暮らしを伝える学術的な資料でもある。たくさんの人に見てもらいたい」と話した。完成は2月中旬ごろの予定。

昭和44年のトネヤの様子(同集落出身の富永誠吾さん撮影)

昭和44年のトネヤの様子(同集落出身の富永誠吾さん撮影)