薩摩藩の黒糖政策を記述 奄美3島、「きびしい搾取」 清水書院の高校歴史教科書

2018年06月11日

子ども・教育

清水書院発行の教科書「高等学校日本史B」

清水書院発行の教科書「高等学校日本史B」

 中学、高校の歴史教科書に鹿児島県の「奄美」が記述されるようになっている。清水書院(東京・千代田区)発行の「高等学校日本史B」は「近世の琉球と奄美」(コラム)の項目を設け、薩摩藩の黒糖政策に言及。「奄美3島は藩の実質的な植民地として、きびしい搾取のもとにおかれた」と、踏み込んで記述した。

 

 奄美関係の主な記述は①近世の琉球と奄美(近世・幕藩体制の成立と国際関係)②幕府・諸藩の改革はどのようなものか(同・幕藩体制の動揺と化政文化)③冷戦は占領政策にどのような影響を与えたか(現代・日本の独立回復と戦後政治)―の3カ所。

 

 ①は「近世の琉球は1609(慶長14)年の島津氏(薩摩藩)の軍事的征服から始まった」と指摘。黒糖の専売が薩摩藩に大きな利益をもたらしたことに言及、「その70%以上を生産した奄美3島は、実質的な藩の植民地として、黒糖生産のモノカルチャー社会とされ、貨幣の流通も禁止されるなど、きびしい搾取のもとにおかれた」と指摘した。

 

 本稿は奄美博物館所蔵の「南島雑話」から「奄美での砂糖取引」の様子を描いた絵が使われている。

 

 ②は薩摩藩の調所広郷が黒糖の専売強化、琉球との密貿易で利益を挙げたと記述。③はサンフランシスコ平和条約(1951年)の締結に伴う、日本の領土の地図を掲載。奄美諸島が53年、日本に返還されたことを記述した。

 

 近世奄美の記述について同社は「沖縄や北海道など『地域』の歴史もできるだけ丁寧に扱うようにしている。図版は黒糖生産に関する当時の様子が分かる資料を探していたところ、『南島雑話』に行き当たり、掲載した」と話した。同書は県内では採択されていない。

 

 奄美市をはじめ県内の中学校が採択している「新編新しい社会歴史」は「(日本の)独立の回復と55年体制」の項目で奄美の返還を取り上げている。

「近世琉球と奄美」の記述

「近世の琉球と奄美」の記述