高齢者らの「足」確保へ 「グリーンスローモビリティ」を実証実験 宇検村

2021年03月24日

政治・行政

夏ごろの納入が検討されている4~5人乗りの小型電動式カート(イメージ写真)

夏ごろの納入が検討されている4~5人乗りの小型電動式カート(イメージ写真)

 乗り合いの小型電動式カートを使い高齢者らが地域内を移動する「グリーンスローモビリティ」の実証実験が、今年夏から宇検村の湯湾地区で始まる。23日、村役場で開かれた地域公共交通会議で了承された。4~5人乗りのカートで、実験期間中の運賃は無料。公共交通として本格的に導入されるのは全国でも先駆的な取り組み。世界自然遺産登録を控え、村内周遊観光にも活用される。

 

 電動式カートは時速20キロ未満。二酸化炭素の排出量が少なく低速で安全なため、高齢者の移動手段や施設間の短距離輸送として国が推進している。

 

 宇検村では役場や診療所、商業施設が湯湾地区に集中しているが、バスの本数も限られているため、高齢者の移動が困難な状況だった。

 

 環境にも優しいグリーンスローモビリティを導入し、自家用有償旅客運送(交通空白地有償運送)をすることで高齢者の施設巡回を促し、景観を守りながら観光にも使える手段として、村が2020年度の新規事業として導入を検討してきた。

 

 巡回コースは役場ー漁協ー虹の園ー元気の出る館など11カ所を予定。しまバスが運営する屋鈍線、宇検線の2路線と接続する朝夕の時間帯は定期運行、それ以外は不定期運行を検討。週末には村内の観光スポットを周遊することも検討している。

 

 電動式カートは受注生産のため注文から納入まで4カ月ほどかかり、8月ごろをめどに11月ごろまでを実証運行の期間とする予定。実験期間中は運賃無料だが、今後、本格運行する際に有料とするかどうか、巡回ルートや頻度と合わせ、検討していく。有償運行することになれば、12月ごろ県に申請し、22年1月ごろの本格運行を目指す。

 

 国交省によると、広島県でタクシーとして利用されている事例や、宮崎県で駅周辺のみで導入されている例はあるが、宇検村のように公共交通として本格的に導入されるのは全国でも例が少なく、観光集客にも期待される。

 

 23日の会議では「カートにドアは付けられるのか」「シートベルトは必要か」などの質問があった。国交省は「低速のため危険性は低く、運転手が講習を受けるためドアはない車両となる」と説明。警察署は「シートベルトの着用は納入される車種による」としている。

 

 会議ではこのほか5月1日から、しまバスの屋鈍発湯湾行きの始発便も予約方式となることや、宇検発新村行の予約方式の廃止案などが了承された。

 

予定されている巡回ルート案(宇検村提供)

予定されている巡回ルート案(宇検村提供)