「非琉球人」となった奄美出身者 埋もれた歴史、解明に情熱 沖大非常勤講師の土井さん

「非琉球人」研究に取り組む土井さん=11日、琉球大学

「非琉球人」研究に取り組む土井さん=11日、琉球大学

 本土復帰前の沖縄で外国人とされた「非琉球人」を精力的に研究している人がいる。沖縄大学非常勤講師の土井智義さん(41)。非琉球人として扱われた奄美出身者の実態を論文にまとめ、2017年に大阪大学で博士号を取得した。土井さんは「非琉球人として扱われた歴史は在沖奄美2世の間でもほとんど知られていない。研究が歴史をつなぐ一助になれば」と話す。

 

 大阪市出身。高校時代に沖縄の音楽に興味を持ったことがきっかけで琉球大学へ進学。大学では琉球方言や在日朝鮮人の文学について学び、卒業後は大阪大学大学院で歴史学を専攻した。

 

 大学院に通いながら、沖縄の基地建設反対運動にも参加した。運動の中で、沖縄の人から浴びせられた「ナイチャーは帰れ」という一言が、土井さんを深く傷つけた。「なぜ、『本土出身』というだけで話を聞いてもらえないのか」。ショックを受けた土井さんは、復帰前の沖縄でも同じように差別的扱いを受けた人々がいることを知る。それが非琉球人だった。

 

 復帰前の沖縄を統治した琉球列島米国民政府(民政府)は、琉球住民と米軍要員以外の外国人を「非琉球人」として分けて管理した。奄美が日本復帰した翌年の1954年、民政府は突如、奄美出身者も本土籍であることを理由に非琉球人とした。

 

 奄美出身者は、これまで認められてきた参政権を奪われ、公職を追われた。民政府は非琉球人を本籍のある場所へ強制送還できる規定も設け、奄美の人を合法的に沖縄から排除できるようにした。

 

 土井さんは、奄美出身者が差別的な扱いをされた背景に、「当時の沖縄の経済状況がある」と指摘する。「アメリカの機密文書に、『沖縄の人口が多すぎて、資源や食料などの面で経済的な負担になっている』との記述がある。数万人いるとされた奄美出身者を帰還させることで、人口過剰問題を解決しようとしたと考えられる」

 

 研究は困難を極めた。国内で「非琉球人」を扱う研究者はほとんどおらず、先行研究もとても少ない。米軍統治下の奄美出身者の状況を調べるために奄美を何度も訪れた。

 

 「沖縄に住む奄美2世の間でも、非琉球人の実態はあまり知られてない。復帰のころを経験した人は、当時のことを語りたがらない。簡単に話せることではないのだろう。歴史が伝承されないまま忘れ去られる可能性が高い」(土井さん)

 

 当時を知る奄美出身者らも同様の危機感を感じている。沖縄奄美連合会(奥田末吉会長)は、来年2月8日に土井さんの講演会を企画している。

 

 土井さんは非琉球人の実態を明らかにすることで現在の「沖縄」と「本土」との対立構造も変えられる可能性がある、とも考えている。「誰も調べていないからこそ、やりがいを感じる」。奄美と沖縄、二つ「復帰」のはざまに埋もれた歴史を明らかにすることに、情熱を傾ける。

 

(沖縄通信員・野添博雅)