与論「観光の島」再生へ一丸 2度のクラスター、影響今も

テーブルへのパーテーション設置など、新型コロナ感染防止対策を徹底し、営業を続けている飲食店=22日、与論町

テーブルへのパーテーション設置など、新型コロナ感染防止対策を徹底し、営業を続けている飲食店=22日、与論町

 2020年、新型コロナウイルス感染症で2度のクラスター(感染者集団)発生を経験した与論島で、「観光の島」の再生に向けた取り組みが始まっている。飲食店の感染防止対策を強化し、コロナ禍で仕事が減少した島民を雇用しての環境整備事業を推進。感染リスクの低い新たな観光スタイルも模索している。

 

 与論島では20年の7月と11月にクラスターが確認された。最初のクラスター発生以降、町では鹿児島大学病院から感染症の専門家を招いた研修会や各店舗への個別指導などを実施。商工観光事業者に対しては、感染防止対策に町独自の補助事業を行い、対策を強化した。

 

 2度目のクラスター発生後、「まだ店によってばらつきがあった」(町の担当者)とする感染防止対策のレベルをそろえようと全店舗を巡回した。20年末には、飲食を伴う島内ほぼ全ての飲食店53店舗が加盟する飲食店組合を設立。同組合と観光協会、町が連携し、各店へのパーテーション(間仕切り)の設置や従業員のマスク着用、店内換気などの感染防止対策をチェックし、休業中の店舗などを除く44店舗を「優良店」として認定した。

 

 2月20日からは飲食店応援企画として、観光協会が優良店で使える500円割引クーポン事業を開始。町の担当者は「2度目のクラスターの影響はまだ続いており、客足が伸びない状況。クーポンが飲食店を利用するきっかけになれば」と話す。

 

 「イベントもできない、人も呼べない。今できることはクーポンで人を動かすこと」とクーポン事業に期待を込めるのは飲食店組合長の山田幸寛さん(52)。山田さんが営む居酒屋「かよい舟」の20年の売り上げは、前年比約60%まで落ち込んだ。感染防止対策として、営業時間を短縮し、56席あった座席を約3分の1の20席に。のれん、座布団、メニュー表など、複数の人が触れる可能性がある物は取り除いた。

 

 夜の客足はなかなか戻らず、ランチ提供やテークアウトの「おつまみセット」販売など新たなサービスを展開して経営を維持している。しかし、「客が来ないことにはどうしようもない」。山田さんは「生活をしていかなければいけないので、店を開けざるを得ない。東京などに比べたら、働ける口があるだけいいと思っている。1年頑張ってこられたんだから、そのうちいいことがある」と自身に言い聞かせるように話を結んだ。

 

 観光客の入り込みが伸び悩む中、町は20年8月から観光施設周辺の環境整備事業を開始。コロナの影響で仕事が減った飲食店の従業員などを緊急雇用し、町が所有・管理する施設周辺の清掃、除草、植栽などの美化作業や、案内看板、ベンチの設置などを行った。ダイバーによる海中清掃も行い、「今まで手をつけられなかった所に目を向けた。観光客をきれいな状態で迎えたい」(町の担当者)と、コロナ収束後の観光需要の回復に備える。

 

 コロナ収束後に向けた新しいアクティビティー(遊び、活動)開発にも力を入れている。星空ツーリズム推進事業は19年から取り組む事業だが、感染リスクの低い活動としても注目。20年度は星空撮影講座など島民向けの啓発・教育活動、ガイド育成、光害対策などに力を入れた。

 

 新たな観光スタイルの提案として、2月から電動キックボードの実証実験もスタートした。与論町商工観光課の麓誘市郎さんは「コロナ感染防止対策については、専門家とも密に連絡をとり、それなりのレベルでやってきており、国の専門機関からも島ぐるみの取り組みを高く評価されている。島内経済は大変厳しいが、何もしないで大人しくしているわけにもいかない。今の取り組みをPRしていきたい」と力を込めた。

 

コロナ収束後に向けた観光施設周辺の整備事業 =2020年12月、与論城跡(与論町商工観光課提供)

コロナ収束後に向けた観光施設周辺の整備事業
=2020年12月、与論城跡(与論町商工観光課提供)