与論島、クラスター発生から1カ月 きょう来島自粛要請解除へ

エラブチなどが並んだ与論町漁協の競り市=22日、同町

エラブチなどが並んだ与論町漁協の競り市=22日、同町

 与論町で新型コロナウイルスのクラスター(感染者集団)が発生して22日で1カ月が経過した。今月8日以降、新たな感染者が確認されていないことから、町側は「感染の封じ込めに成功したとみられる」として、23日にも約1カ月間継続してきた来島自粛要請を解除する考えを示している。町内の飲食店や宿泊施設では感染防止策を強化し、観光客や来店客を受け入れる準備を進めている。院内感染が確認された与論徳洲会病院の外来診療も24日に再開する予定で、住民たちは日常生活を取り戻しつつある。(沖永良部総局・蘇嘉瑞人)

 

 県が与論町での感染確認を発表した7月22日以降、休園していた町内4カ所のこども園は、7日までに全園が再開した。茶花こども園に子どもを預けている30代女性は「妊娠していて休園中は育児が大変だった。島内に常駐の産婦人科医がいないため、出産のための診療がなかなか受けられなかったのも不安だった。今後、来島者は『与論にコロナを入れない』という気持ちで予防を徹底してから訪れてほしい」と話していた。

 

 与論徳洲会病院は21日まで外来診療を制限し、定期的に通院する患者に対しては電話で問診し、薬を窓口で手渡すなどの対応を実施してきた。21日に妻の薬を受け取りに来院した岩村中里さん(72)=同町城=は「病院は島民の命を守る大切な場所。コロナで病院が完全にストップしなくてよかった。電話したら薬がもらえて助かっている」と語った。

 同病院の牧均事務長(55)は「24日からは通常通りの外来診療に戻し、手術なども再開する。耳鼻科や皮膚科、眼科などの専門科医を島外から招いて行う診療も随時再開していく」と説明した。

 

 町商工会とヨロン島観光協会は感染症対策のガイドラインを作成し、積極的に予防に取り組む飲食店を認定する仕組みづくりに着手。観光協会の里山剛史さん(34)は「与論島のクラスターは居酒屋での会食も要因の一つとされているので、絶対に飲食店で感染を広げないという認識を事業者で共有している」と力を込めた。

 

 同町茶花の繁華街・銀座通りにある居酒屋かよい舟は、9月3日の営業再開を目指し、感染症対策を徹底するため店内の改装やメニュー開発などに取り組んでいる。店主の山田幸寛さん(51)は「島内のガイドラインに沿って営業すると、客席を56から26に減らし、営業時間も9時間から4時間に短くする必要がある。少しでも売り上げを確保するためランチ営業も考えている。母の代から45年間、町内で飲食店を続けてきた。再開を楽しみにしてくれているお客さんのためにも頑張るしかない」と話した。

 

 町漁協の阿多美智雄組合長(61)は22日の競り市を見詰めながら「コロナの影響で沖縄の市場が低調な上、島内の飲食店も閉まっていて魚の値段は例年の半値ほど。まだまだ我慢の時期は続くと思う」と語った。この日エラブチ(ブダイ)を水揚げした徳田孝久さん(59)=同町古里=は「イセエビは、相場が安すぎるので水槽にストックした。コロナの影響もいつかは終わるでしょう」と淡々と話していた。

 

 17日に営業を再開した同町麦屋の旅館・星砂荘の永井新孝代表(57)は「8月の利用客は例年の1割程度。9月もほとんどない。10月は予約の問い合わせが増えてきたが、まだまだ先は見えない」と不安を口にしながらも「新型コロナウイルスとうまく付き合っていく観光の在り方を考えないといけない。星空ツアーなど3密(密閉・密集・密接)を避けた商品開発なども必要だ」と前を向いた。