世界初、小型焼却炉で発電 トマス技研の特許戦略㊤

特許登録を喜ぶトマス技研の社員と、福富社長(後列右から2人目)=13日、沖縄・うるま市

特許登録を喜ぶトマス技研の社員と、福富社長(後列右から2人目)=13日、沖縄・うるま市

 無煙でダイオキシン排出を大幅に抑えた小型ごみ焼却炉「チリメーサー」を開発・販売するトマス技術研究所(本社・沖縄県うるま市南風原、福富健仁社長)は3月30日付で、焼却熱を利用した蒸気発電装置について特許を取得した。一般ごみや産廃など幅広い種類のごみを燃やせるだけでなく、焼却時に発生する熱でお湯を沸かし、その蒸気で電気を安定的に作り出す特殊技術が認められた。福富社長は「われわれのような中小企業が大手メーカーと渡り合って勝っていくためには、特許の力しかない」と特許戦略の重要性を語った。(沖縄・佐久本薫通信員)

 

 福富社長によると、小型のボイラーによる小容量発電装置は既に他社が開発しているが、小型焼却炉による発電装置は世界初。「例えばボイラーは、灯油なら灯油をずっと燃やすことで熱量が安定するが、ごみは生ごみもあればタイヤもあり、同じ重さでも燃やしたときに発生する熱量が違う。ごみは熱源が不安定なんです。不安定な蒸気から安定的な電気を得る。それは大変でしたよ」と振り返る。

 

 初代チリメーサーが完成したのは15年前。大型処理施設は広域化が困難な離島や山間部にはなじまないと、離島へき地で活躍する環境性能の高い小型・中型焼却炉の開発にこだわった。その性能が認められ、沖縄の全離島の自治体や企業がチリメーサーを導入。奄美でも今年に入り、与論町と天城町、龍郷町に試験的に無償貸与された。

 

 発電装置開発のきっかけは2012年。東京営業所を開設した折、東北地方の限界集落から「焼却だけでなく発電もできないか」との要望を受けた。すぐに開発に乗り出し、13年、焼却炉の廃熱を利用した給湯設備が完成。チリメーサーはごみから熱エネルギーを生み出す「サーマルチリメーサー」に進化を遂げた。続いて小型で発電効率の高い蒸気タービンの開発に成功し、独自の発電システムが出来上がった。

 

 その過程で確立した特定技術は七つ。順次特許出願し、給湯温度制御装置や今回の発電装置を含む5件について特許・実用新案を取得した。残りは査定待ちだが、登録の見込みは高い。

 発電型チリメーサーは、7件すべての技術について特許登録されたのち販売を開始する。現段階の発電量は5キロワットだが、最終的には小型焼却炉で30キロワット、中型焼却炉で100キロワットを目指すという。

 

 「寝ても覚めても頭の中はモノづくりをやっている」(福富社長)。現在は、サーマルチリメーサーによる充電・送電装置、さらには遠隔監視できるIoT装着型チリメーサーを鋭意開発中だ。独自技術はすべて権利化する。誰のまねでもなく、誰にもまねすることができない「強い特許」を強みに、オンリーワン技術を実現する努力は尽きることがない。

 

 ▽メモ

 福富健仁(ふくとみ・けんじ) 1965年、奄美市名瀬出身。名瀬小、金久中、大島高校を経て琉球大学で機械工学を専攻した。卒業後は産業用ロボット製造会社、専修学校講師、廃棄物処理プラントメーカーを経て2007年1月、トマス技研㈱を設立。06年、第33回沖縄の産業まつりで県知事賞、環境大臣賞(地球温暖化防止活動技術開発・製品化部門)を受賞するなど受賞歴多数。両親は徳之島出身。趣味は高校時代に熱中したバレーボール。昨年は母校の沖縄遠征も支援した。マスターズバレーの現役でもある。