各地で観光客受け入れ急ぐ―群島国立公園誕生から1年

国立公園に指定された国内最大級の亜熱帯照葉樹の森=奄美大島

国立公園に指定された国内最大級の亜熱帯照葉樹の森=奄美大島

 奄美群島国立公園の誕生から1年が経過した。群島内からは自然環境の保護と活用への地元の意識向上や観光客増など、公園指定の効果を喜ぶ声が聞かれる。今夏に奄美大島と徳之島の世界自然遺産登録の実現が実現すれば、観光客の急増が見込まれる。行政や観光関係者は地域間や異業種の連携を図りながら観光客受け入れ体制の整備を急ぐ考えだ。

 

 奄美群島国立公園の誕生について、奄美市の朝山毅市長は「奄美への注目度が高まり、来島客数も増加した」と振り返り、「認定エコツアーガイド制度など観光客の受け入れ環境を整え、遺産登録へ向け地元自治体や関係機関との連携を図りたい」と話した。

 

 伊仙町の大久保明町長は、県がルート設定を進める「奄美トレイル」などを通じて「地元の貴重な自然を再発見できた」と述べ、徳之島で自然保護活動を進めているNPO法人など民間の取り組みにも期待する。

 

 奄美海洋生物研究会の興克樹会長(47)は「地元の人々が海洋生物を地域資源と位置づけ、保全と活用の体制が整いつつある」と評価。徳之島観光連盟の重田勝也会長(44)も「希少種の保護や不法投棄の防止など、島民の意識が変わってきた」と振り返り、重田さんは「世界遺産に登録による来島者増は必至。受け入れ体制を整えたい」と力を込めた。

 

 喜界、沖永良部、与論の3島でも、それぞれの個性を生かした国立公園指定の効果を実感する声が聞かれる。

 

 喜界島は、阿伝集落のサンゴ石垣が「環境文化型」の国立公園に組み込まれた。喜界町文化財保護審議委員でボランティアガイドの外内淳さん(55)は「バスツアーなどの観光客がじわりと増えており、サンゴ礁隆起の島の魅力が生きている」と分析する半面、災害などで損傷した石垣の修復や自然環境の維持などを課題に掲げた。

 

 沖永良部島の県自然保護推進員、新納忠人さん(75)は「鍾乳洞などの特長が発信され、ケイビング観光などの定着が感じられる」と話す一方で「依然、ごみのポイ捨てなどが目立ち、地元の意識は期待していたほど上がっていない」と苦言も呈し、今後の改善へ取り組みを訴えた。

 

 百合ケ浜をはじめ海岸線の美しさを売りに観光展開しているヨロン島観光協会の町岡安博事務局長(53)は「国立公園指定は奄美の認知度向上の一つのきっかけになったと思う」と述べ、世界自然遺産登録に向けては、島別の地域的な個性や自然を守りながら生かす取り組みを求めた。

 

 

奄美群島国立公園 2017年3月7日、全国34番目の国立公園として指定された。公園面積は陸域4万2181㌶、海域3万3082㌶。国内最大級の亜熱帯照葉樹林や隆起し続けるサンゴ礁段丘、琉球石灰岩の断崖やカルスト地形、世界の北限に位置するサンゴ礁など豊かな自然環境の中に、アマミノクロウサギなど固有種や希少種を含め多様な動植物が生息・生育する。保護管理の方針に、優れた自然を守る「生態系管理型」と、自然と密接に関わる暮らしが育んだ文化を継承する「環境文化型」の従来にない2本柱を掲げた。奄美大島、徳之島の特別保護地区、第1種特別地域の計1万3978㌶の森は、18年夏の登録を見込む「奄美大島、徳之島、沖縄島北部及び西表島」の世界自然遺産の候補地。