奄美豪雨から10年① 河川で進む防災工事 防災対策(ハード面)

柳橋の架け替え工事が進む住用川を見詰める西仲間集落元区長の満永さん=14日、奄美市住用町

柳橋の架け替え工事が進む住用川を見詰める西仲間集落元区長の満永さん=14日、奄美市住用町

 「奄美地方、記録的豪雨」「道路寸断、集落孤立」「避難住民 不安な夜」│。2010年10月20日に発生した奄美豪雨を報じる南海日日新聞の1面と社会面の見出しだ。3人の尊い命を奪い、住家だけでも453棟が全半壊、967棟が浸水するなど未曽有の被害をもたらしたあの豪雨から10年。当時を振り返り、豪雨後に進められた防災対策に加え、大型化している台風など気象の変化、新型コロナウイルス感染症対策など新たに直面している課題を含め今後の災害対応について考える。

 奄美豪雨では河川の氾濫や土砂崩れなどが各地で発生し、防災施設が壊滅的な被害を受けた。防災機能を回復、強化するため県は豪雨後、土砂災害(砂防・急傾斜地・地滑り)対策として、大島支庁建設課管内で15カ所の整備に着手し、うち11カ所で工事を完了している。河川関係では、龍郷町の大美川と戸口川の下流域を対象に12~16年度、床上浸水対策を緊急事業として実施。河道の整備などで豪雨前と比較して大美川は約2倍、戸口川は約3倍流下能力が向上した。

  河川ではこのほか、総合流域防災事業として奄美市の住用川と川内川、大川、龍郷町の大美川と秋名川の5河川で、治水機能を高める工事が今も進められている。

 住用川の総合流域防災工事は、14年度から本格的な工事に入った。豪雨で住用川は氾濫し、西仲間地区では97戸が浸水、2人が犠牲になるなど甚大な被害を受けた。県は水害の再発を防ぐため河川の拡幅や護岸整備などを進めており、工事は終盤に差し掛かっている。

 対象は住用川と役勝川が合流する下流域から上流への2・7キロ。従来の河川幅員(平均45メートル)を25~50メートル拡幅して水の流量を増やすことで治水力を高めることが狙いだ。

 現在は川の拡幅に伴い架け替える柳橋の新しい橋桁を設置しており、年内にも本体の架け替えを完了する。引き続き橋と国道部分をつなぐ道路を改良する。新しい橋への切り替えは21年度になる見通し。柳橋の架け替えと並行して橋の下流左岸側約50メートルまでの拡幅や護岸整備も進んでいる。

 工事は防災面だけでなく、河川に生息する生物や環境に配慮した近自然工法を取り入れているのが特徴。リュウキュウアユの産卵への影響を避けるため3~5月と11~翌年2月中旬の期間は川の工事を中止しているほか、上流では水制工や分散型落差工などと呼ばれる工法を利用して河床の保全を図っている。

 「畑を見に行く途中、水かさが急に増して車を乗り捨てて逃げた」と話すのは豪雨当時、西仲間集落の区長だった満永健一郎さん(80)。あまりに雨脚が強いため自宅から500メートルほど離れた畑を見に行こうとしたが、引き返すしかなった。自宅は床下まで浸水した。

 満永さんは「集落には体が不自由な高齢者が24人いた。公民館まで私もおぶって避難させた。畳など災害ごみが山積みで大変だった。炊き出しもしたね」と当時を振り返る。

 住用川の防災工事に当たって用地取得推進員も務める満永さんは「住用川の氾濫は支川の冷川から始まった。その冷川から住用川に注ぎ込む部分を広げる工事が3年前に終わり、ひとまず安心している。工事は西仲間と石原の地区民の悲願だった。県など工事関係者にはとても感謝している。二度とあのような怖い思いをしないよう早く工事を完了させてほしい」と願った。

 満永さんが気掛かりなのは、豪雨前は140世帯(230人)を数えた集落の人口が、この10年間で73世帯(128人)にまで減ってしまったこと。「高齢化もあるが、豪雨で名瀬の市営住宅などに一時的に移ってそこから戻らなかった」と残念そうに話した。