奄美豪雨から10年③ 情報拡充 活用が鍵に 気象

奄美群島の記録的な大雨

奄美群島の記録的な大雨

 奄美豪雨が発生した2010年10月20日、奄美地方には秋雨前線が停滞し、南シナ海を北上していた台風13号の影響で、前線に向かって湿った空気が流れ込んだ。長時間にわたって降り続いた大雨は、奄美各地に大きな爪痕を残した。

 浸水被害が相次ぎ、高齢者2人が亡くなった奄美市住用町では、県の雨量計で1時間雨量が正午までに130ミリ、午後1時までに131ミリを記録。午前10時からの3時間雨量は354ミリと、「100年に一度」とされる雨量(195ミリ)の約1・8倍に上り、18日の降り始めからの総降水量は825ミリに達した。

 大雨は島の広い範囲に及んだ。奄美市のほか、大和村、瀬戸内町付近でも、解析雨量が1時間に120㍉を超える猛烈な雨が降り、名瀬測候所は20日午前11時53分と午後1時25分、午後3時25分の3回にわたり、「記録的短時間大雨情報」を発表した。

 20日の気象情報では、「10月の月降水量の平年値を大幅に超えている」「過去、例を見ない猛烈な大雨」と緊迫した状況を伝え、各市町村に土砂災害や河川の氾濫、低地の浸水に最大級の警戒を呼び掛けた。

 「『記録的短時間大雨情報』が何回も出ると、ほぼ間違いなく大きな災害に結びつく」。名瀬測候所の上野健志郎所長は指摘する。

 当時の状況について、「奄美大島の南北に雲の帯が連なり、次から次へと流れ込んで、猛烈な雨を降らせた。前線付近で活発な雨雲が発生する大雨の典型的な事例だ」と分析。近年、豪雨災害の要因としてよく聞かれるようになった「線状降水帯」と同じメカニズムだという。

 奄美豪雨から10年の間に、記録的な大雨は続発した。翌11年には、奄美大島の北部、南部が豪雨に見舞われた。台風や前線を要因に、「50年に一度の大雨」が群島内で相次いだ。

 全国でも、毎年のように大規模な水害が発生している。温暖化などを背景に、数十年に一度といわれる自然災害が、どこでも、何度でも起きる恐れがあるという認識は広まりつつある。

 頻発する災害を受けて、危険を周知する防災気象情報は改善が進んだ。13年8月に運用が始まった「特別警報」は、警報の基準をはるかに超える重大な災害が発生する恐れがある場合に出される。東日本大震災などの際に、危険性の高さが十分に伝わらず、迅速な避難に結びつかなかった反省から新設された制度だ。

 「50年に一度の大雨」は、特別警報の導入に伴い設定された指標で、陸地の面積が狭い離島などを対象に発表されている。奄美でこれまでに特別警報が出されたことはないが、名瀬測候所は、奄美豪雨が相当する災害だとしている。

 気象庁が17年にホームページで公開を始めた浸水害や洪水の「危険度分布」は、従来の土砂災害と合わせて、大雨による災害が起きそうな地域の危険度が、5段階の色分けで地図に示されている。「小さな河川でも、リアルタイムで危険度が分かるようになっているが、まだまだ情報が浸透していない」と上野所長は周知不足を課題に挙げる。

 名瀬測候所は今年2月、各市町村の防災担当者向けにワークショップを開いた。大雨を想定して、危険度分布などの情報を基に避難勧告や避難指示を出したり、グループで話し合いながら対応を検討する初の試みだ。

 災害から命を守るには、行政や、住民自身が情報を活用して、的確に行動する仕組みづくりが鍵になる。上野所長は「コロナ対策がしっかりできるようになれば、子どもや住民向けのワークショップも積極的に進めたい」と力を込めた。