奄美豪雨から10年④ どうする高齢者の避難

奄美豪雨災害時に避難所となった奄美体験交流館=2010年10月(奄美市提供)

奄美豪雨災害時に避難所となった奄美体験交流館=2010年10月(奄美市提供)

 2010年10月21日、奄美市住用町見里の奄美体験交流館には100人近い避難者が身を寄せていた。豪雨発生2日目。半袖、はだし姿に、床にはカップ麺|。そんな様子が写真に残されている。今年9月、過去最大級といわれた台風10号でも多くの島民が避難所へ詰め掛けた。高齢化が進み、新型コロナウイルスの感染拡大が懸念される現在、避難所では何が求められているのか。課題を探った。

 

 奄美豪雨発生当時、避難所は旧住用村だけで14カ所開設された。奄美体験交流館には、他の集会場に避難していた住民も集まり、最大で365人を収容。38日間運営された。

 

 当時は、段ボールベッドもプライバシー保護のためのパーテーション(間仕切り)もなかった。避難者はアリーナの中央に集まり、床にござや毛布を敷いて寝た。奄美市住用町西仲間の和田美智子さん(77)は「不便だった記憶はない」と話す。特に助かったのは体験交流館にあった入浴設備だという。トイレも洋式の水洗トイレが完備され「ありがたかった」と振り返る。

 

 課題となったのが、特別養護老人ホーム「住用の園」の入所者の受け入れだった。体験交流館には仮設診療所が開設し、車いすも多数用意されたものの、衛生面や介護の人手を考えると避難所では対応できないと判断。住用以外の福祉施設へ搬送された。

 

 奄美豪雨を教訓に奄美市は現在、市内5カ所の福祉施設と協定を結び、福祉避難所としている。ただし、避難できるのは事前にケアマネジャーなどが必要性を判断した高齢者たち。収容できる人数が限られるため、事前に要介護者を把握しておく必要がある。

 

 今年の台風10号の際は、避難所リストに掲載しなかった施設もあった。市は「人が殺到して本当に必要な人が入れなくなることを避けた」と話す。高齢化が進む現状に対応し、今後も提携先を広げていく必要がある。

 

 高齢者の課題以外にも、新型コロナウイルスの感染拡大が懸念される今、避難所運営はさらに複雑化している。

 

 奄美市危機管理室の奥伸太郎室長によると、今回の台風10号では市内78カ所に避難所を開設。感染防止のため1世帯ごとに2㍍空ける対策を行った。結果、市内9カ所が満員に。本紙読者からは「避難所は10世帯ほどで満員となり、トイレが和式しかなく、高齢の母が心配で移動した」「移動先の避難所にはマットもなかった」との声も寄せられた。

 

 現在、市は避難所として市内に114施設を確保。統計上は4万人超の収容が可能だ。しかし、すべての避難所に洋式トイレが完備されているとは限らず、マットやパーテーションといった資機材についても「段階的に備えていかざるを得ない」と話す。運営する職員の数が不足しているのも課題の一つだ。

 

 東日本大震災を経験し、県専門防災アドバイザーを務める岩船昌起鹿児島大教授も、新型コロナ時代の避難所運営の難しさを語る。避難所の込み具合をSNSを活用してオンタイムで掲示する方法や、安全が確保されるようであれば「車中泊も有効な手段」と示唆。「そのような避難者への対応も考える必要がある」と指摘する。

 

 感染拡大を予防するためには、受け付けで入退所者を把握することを推奨。台風10号では避難所から避難者が無言でいなくなったケースも。消防団が捜索に行くと自宅に帰っていたそうだ。奥室長は「コミュニケーション不足だったのでは」と推測。岩船教授は「どんな時代でも顔の見える信頼関係が防災の鍵」と話す。