「幻の島豚 復活今度こそ」 奄美で研究会発足

2019年07月20日

地域

奄美の島豚を復活させたいと意気込みを語る奄美島豚復活研究会21のメンバー=19日、奄美市名瀬

奄美の島豚を復活させたいと意気込みを語る奄美島豚復活研究会21のメンバー=19日、奄美市名瀬

 鹿児島黒豚のルーツで「幻の黒豚」といわれる奄美在来種の島豚を復活させようと、奄美の財界関係者が19日、「奄美島豚復活研究会21」を発足させた。事務局長の新納誠人・奄美ミート㈲代表取締役は「奄美観光が盛り上がってきている中、島豚の復活で奄美の食文化を発信していきたい」と話している。

 

 新納さんらによると、奄美の「幻の黒豚」にルーツを持つ島豚は現在、宮城県と鹿児島県霧島市、奄美群島内の小規模養豚家が飼育。宮城県石巻市では「幻の奄美の島豚」としてふるさと納税の返礼品として人気という。霧島市では「黒毛奄美島豚」として販売。群島内の小規模養豚家は市場に販売はしていない。

 

 島豚は耳が厚大で垂れており、背がしなれ、鼻が長く、体毛は黒色なのが特徴だという。

 

 経済評論家の叶芳和さんによると、奄美固有の在来品種は600年ほど前に中国と沖縄から奄美に伝わったとされる。明治時代にヨーロッパから別の品種の豚がもたらされ、交配されたことから、純粋な在来品種は一度そこで途絶えた。

 

 現存する各地の島豚は、明治時代にヨーロッパの品種と掛け合わせた喜瀬豚。喜瀬豚は生産性が低かったため、鹿児島黒豚や白豚が主流になっていった。1980年代に、島豚が絶滅しないよう島外に出されたものが、現在の宮城県や霧島市の黒豚のルーツとなっているという。

 

 これまでにも戻し交配による島豚復活の取り組みはあったが、豚の飼育環境の問題や、コストがかかりすぎること、鹿児島黒豚をPRしたい県側との折り合いがつかず、復活には至らなかった。

 

 今回は有村修一氏(有村商事㈱社長)や里泰慶氏(㈱グリーンストア社長)、村山三千夫氏(㈱南海日日新聞社社長)など10人が発起人となり、奄美群島振興開発基金の活用などを計画。大学関係者の協力を得ながら遺伝子を集め、約3年かけ島豚を復元する予定。将来的には養豚施設や組合をつくり、餌を提供する農家にも普及させていきたいという。

 

 19日、県大島支庁で記者会見し、幼い頃喜瀬豚を食べたという新納氏は「味や容姿、脂の付き具合がほかの豚と違っておいしかった。奄美の経済活性化のためにも実現したい」と話した。

霧島市で飼育されていた奄美の島豚をルーツに持つ島豚=2019年4月、奄美市(提供写真)

霧島市で飼育されていた奄美の島豚をルーツに持つ島豚=2019年4月、奄美市(提供写真)