名物ガジュマル新天地へ 名瀬港埋め立てで市民要望

2020年02月14日

地域

名瀬港本港地区埋め立て地に移植されたガジュマル=13日

名瀬港本港地区埋め立て地に移植されたガジュマル=13日

 奄美市名瀬矢之脇町で市民に親しまれていた名物ガジュマルがこのほど、名瀬港本港地区埋め立て地の緑地公園建設予定地へ移植された。同地区の開発に伴い、市民から保存してほしいとの要望が寄せられたため。市は「新公園のシンボルになれば」と期待している。

 

 ガジュマルは矢之脇交差点信号機近くの歩道脇に植えられていたもの。4本の幹が横に伸びた幹でつながっていて、漢字で例えると「而」のような形になっている。横幅は約7メートル。

 

 このガジュマルが移植されるのは2度目。1992年に亡くなった盛岡繁さん(享年73)=瀬戸内町篠川出身=が、名瀬平田町の自宅そばの川岸で育てていた。植えたのは盛岡さんが平田町に引っ越した1967年以降とみられ、河川の護岸整備に伴って96年ごろに矢之脇町へ移植された。

 

 遺族によると、盛岡さんは岩手県の農学校を卒業後、名瀬浦上町の農業試験場大島支場で稲作関連の仕事をしていた。自宅庭にもノウゼンカズラやソテツ、ハイビスカスを植えるなど植物を育てるのが趣味だったという。

 

 妻のキヌエさん(90)=名瀬浜里町=は「矢之脇を通るたび、孫たちに『じいが大事に育てたガジュマルだよ』と教えていた。市民から保存の声が上がり、夫も誇らしく思っているはず」と話し、「今度の居場所は広い公園。伸び伸びと末永く市民に愛されてほしい」と笑顔を見せた。

 

平田町にあったころのガジュマルと繁さんの写真を手にするキヌエさん=12日、名瀬浜里町の自宅

平田町にあったころのガジュマルと繁さんの写真を手にするキヌエさん=12日、名瀬浜里町の自宅