設立60周年の県行政書士会 会長は奄美市出身の鶴さん

2020年10月28日

地域

遺言や相続、内容証明、公的証明の文書作成、農地転用の許可申請など、生活に密着した業務に携わる行政書士は「身近な法律家」ともいわれる。県内に22支部を設け、800人以上が登録する鹿児島県行政書士会が今年、創設60周年を迎えた。会長を務めるのは奄美市名瀬出身の鶴信光さん(73)=姶良市在住。「人々の暮らしに寄り添いたい」との思いを胸に歩んできた。2017年の会長就任後もこの理念を忘れることなく、日々の業務に向き合っている。

 

 鶴さんは奄美市名瀬根瀬部生まれ。県立大島実業高校(現奄美高校)を卒業後、「世の中の治安維持に貢献したい」という思いから1970年に県警入り。74年から76年までは瀬戸内署にも勤務した。

 

 同署勤務のうち1年間は管鈍駐在所の最後の駐在員。管轄は瀬戸内町の花天、管鈍、西古見と宇検村の阿室、平田、屋鈍の6集落。道路網も十分に整備されていない時代だったが、各集落にバイクを走らせながら任務をこなした。

 

 「きつかったけれども、住民生活に溶け込みながら地域の役に立てる喜びを強く感じた。警察官としての原点でもあった」と振り返る。40代のころには「退職後も県民に寄り添いたい」との思いが強まり、地域住民の暮らしに身近に関われる行政書士の仕事を意識するようになった。

 

 行政書士登録は2008年。今年9月11日現在、県行政書士会の登録会員数は826人で、1960年の発足当初の4倍以上に増えた。創立60周年の今年は「ある意味、激動の年になった」と実感している。

 

県行政書士会長・奄美市出身の鶴さん写真 丸山 理由の一つが新型コロナウイルスだ。リモート業務導入など「社会や業務形態の在りようもこれから大きく変わる。法律に加え、オンラインの知識や技術の習得が必要になる」と話し、社会変化に柔軟に対応することの重要性を訴える。

 

 相談者と直接、顔を合わせての業務が難しくなっても忘れてならないのは、相手の立場に寄り添う姿勢だ。「大切なのはコミュニケーション。若手にも伝えたい」と繰り返す。

 

 座右の銘は「和顔愛語(わげんあいご)」。「和やかな笑顔で愛するように語りかける」という意味があるという。

 

 警察官時代に感じた自身の原点でもある「地域住民の役に立てる喜び」を確認しながら、60年の節目を迎えた組織のリーダーとして「地域貢献に力を尽くしたい」と力を込めた。