IUCN勧告「遺産登録への道示す」 徳之島で講演会

2018年05月15日

地域

 

奄美と沖縄の世界自然遺産登録に向けて講演した星野氏=13日、徳之島町亀津

奄美と沖縄の世界自然遺産登録に向けて講演した星野氏=13日、徳之島町亀津

 世界自然遺産への道は絶たれたのか!? ~まず知ることから始めよう~」をテーマにした世界自然遺産講演会が13日、徳之島町文化会館であった。鹿児島大学特任教授の星野一昭氏と、東京都小笠原村の初代環境課長で環境省自然環境局野生生物課の深谷雪雄氏が講演。今年夏の奄美・沖縄4島の世界自然遺産登録を延期するよう国際自然保護連合(IUCN)が勧告したことについて、星野氏は「確実な遺産登録への道を示してくれた」と評価し、遺産登録に向け自然環境の保全に住民が主体的に関わるよう呼び掛けた。

 

 講演会は、今月4日(日本時間)にIUCNが国連教育科学文化機関(ユネスコ)に勧告した内容の住民周知を目的に候補地の1島・徳之島3町が主催。約450人が聴講した。

 

 星野氏は環境省が発表したIUCN勧告の概要について、「遺産登録に必要な3条件のうち、遺産価値と保護管理は適合したが、遺産区域の設定に疑問符が付いた」と分析。「沖縄島の北部訓練場返還地を遺産区域に編入するよう具体的な助言もあり、日本政府に『遺産登録が確実な形で推薦してほしい』という勧告」と強調した。

 

 遺産推薦地域が北部、南部に分かれている徳之島については「2カ所にアマミノクロウサギなど希少種が生息していることが遺産価値」と持論を展開。住民の役割として▽遺産価値が評価された島の自然を知る▽一人一人ができることに取り組む―などを提案し、「徳之島の未来を決めるのは島民。自然環境の保全を通して遺産登録に主体的に関わり、皆さんの努力で遺産登録を勝ち取ろう」と訴えた。

 

 深谷氏は2011年に世界自然遺産に登録された小笠原の管理体制や外来種対策など自然保護の取り組みを紹介。「遺産登録で終わりではなく、対策は今も続いている。課題への対応に特効薬はなく、みんなで考えることが守り、生かすことにつながる」などと述べた。

 

 講演後の意見交換で、遺産登録に向けた住民への意識啓発について、星野氏は「登録延期の勧告が住民にいいメッセージと伝わることが大事。島の子どもたちへの環境教育を推進していくことも重要」とアドバイスした。

奄美と沖縄の世界自然遺産登録に向けて講演したと深谷氏=13日、徳之島町亀津

奄美と沖縄の世界自然遺産登録に向けて講演したと深谷氏=13日、徳之島町亀津