「どこにいても」「ここでしか」 島暮らしのフリーランス育成 奄美市

奄美群島内のハンドメード作家が参加し、ものづくりの魅力を伝えた「あまみハンドメイドマーケット」=18年2月、奄美市名瀬のAiAiひろば

奄美群島内のハンドメード作家が参加し、ものづくりの魅力を伝えた「あまみハンドメイドマーケット」=18年2月、奄美市名瀬のAiAiひろば

 島はマーケットが小さい。雇用が少ない。人口が減少している―。そんな離島のハンディを克服しようと、奄美市はICT(情報通信技術)分野のフリーランス育成に取り組んでいる。2015年度に「フリーランスが最も働きやすい島化計画」を策定し、人材教育や環境整備に注力してきた。20年度には第2期計画(第2ステージ)がスタート。ウィズコロナ時代の働き方とも相まって、島暮らしのフリーランスへの注目度は増しているという。

 

 ■38人が市内移住

 

 市のフリーランス計画は15年7月に策定。奄美12市町村が策定した、奄美群島成長戦略ビジョンの重点3分野「農業」「観光・交流」「情報」の一つである情報分野を活用し、地方創生(まち・ひと・しごと創生)を目指すというもの。さまざまなノウハウや技術力を持つエンジニアや職人らのUIターンが増えていたことも背景にある。

 

 フリーランスとは、特定の会社などに属さない個人事業主や小規模事業者などで、自らの技能を提供することによって報酬を得る。ざっと挙げてみても、出版業界のライターやウェブデザイナー、カメラマン、クリエーターなど多くの職種にみられる。サラリーマンに比べ、収入が安定しないデメリットはあるものの、個人のスキルと努力次第では可能性の広がる働き方だ。

 

 商工情報課によると、計画の具体的な取り組みは▽人材育成講座「フリーランス寺子屋」▽クラウド系企業(ランサーズ、PIXTA、GMOペパボ)との連携協定締結▽ハンドメードマーケット開催―など。「どこにいてもできる仕事、ここでしかできない暮らし」をキーワードに掲げた。

 

 19年度までの5年計画で、述べ202人のフリーランスを育てた。モデルケースとしてライター系(カメラマン、ホームページ作成業務兼業)で年収260万円、オンライン販売を手掛けるハンドメード作家で年収300万円の事例も。移住実績では、島外から38人が市内へ移り住んだ。

 

 環境整備面では18年度までに光ブロードバンドを市内全域へ整備した。

 

 ■拠点整備で次のステージへ

 

 20年12月策定の第2期計画は20~24年度の5年間に設定した。第1ステージを「人材の育成・環境整備」と位置付け、第2ステージの今期は「モデルケースの普及とコミュニティー形成の支援」を目指す。

 

 目標として①25人のフリーランス創出②25人のフリーランス移住支援③年収60万円以上の子育てワーカーを10人育成④年収300万円のフリーランスを4人育成―を掲げた。

 

 目玉は、拠点施設である「ワークスタイルラボ」の整備。同市名瀬浦上町の市産業支援センター2階を改修し、今年中の完成を予定している。

 

 コワーキングスペースをメインに、調理室を兼ねた商品開発スペースや個別スペースなどを配置。「お試しオフィス」のサテライトオフィスも3室用意する。

 

 担当者は「情報分野にとどまらず、多分野の業種に活用してもらいたい。ビジネスのマッチングにつながれば」と期待を寄せる。

 施設には、総合的なマネジメントを行う「コミュニティーマネジャー」を配置し、相談機能を充実させる。フリーランスと島内外企業とのワークショップを開催し、本場奄美大島紬など多様な産業との連携も図りたい考え。

 

フリーランス支援窓口を掲げる奄美市商工情報課の(右から)中江康仁係長、森永健介さん

フリーランス支援窓口を掲げる奄美市商工情報課の(右から)中江康仁係長、森永健介さん

 ■コロナ時代の働き方

 

 商工情報課は「第1ステージでモデルケースとなる成功事例を創出できたのは、一つの成果。地方回帰の流れの中でフリーランスに関する問い合わせも多く、島外からの議員視察やメディア取材も増えた。現計画は情報分野に絞っているが、フリーランス全般でみると奄美大島への移住者は増加しているのではないか」とみる。

 

 昨年は、新型コロナウイルスをきっかけとして、人々の仕事観や生活観に大きな変化が起きた。にわかに脚光を浴びた在宅ワークもフリーランスでの働き方の一つだ。

 

 同課は「コロナ禍において今後も移住は見直されていくのではないか。リモートの活用で島外から仕事を持ってくることができる。IUターン希望者の中には、既にある程度の顧客をつかんでいるケースもある。さまざまな働き方で市民の所得向上につながれば」と語った。