クルーズ船寄港年内中止 需要減、地元経済にも影 奄美市の名瀬港

2020年09月22日

社会・経済 

名瀬港に寄港した7万㌧級の大型客船「サン・プリンセス」=2018年7月、奄美市名瀬

名瀬港に寄港した7万㌧級の大型客船「サン・プリンセス」=2018年7月、奄美市名瀬

 奄美市名瀬港へ今年4月以降に寄港予定だった16隻のクルーズ船は、全て寄港中止となったことが、市紬観光課への取材で分かった。新型コロナウイルスの世界的な感染の広がりでクルーズ船観光の需要が落ち込み、運航自体の中止が相次いでいるため。世界自然遺産候補地としての注目度の高まりを背景に、近年、奄美大島へのクルーズ観光は上り調子だったが、コロナ禍で状況は一変。地元経済にも影を落としている。

 

 同課によると、過去3年間の名瀬港へのクルーズ船受け入れ実績は2017年度が13隻、4683人。18年度が19隻、2万2500人。19年度が20隻、1万7118人だった。

 

 今年は1月と2月に各1回、「ぱしふいっくびいなす」が寄港して以降は途絶えており、来年の入港予定もコロナ禍の中で不透明な状況だ。

 

 市や奄美大島商工会議所によると、クルーズ船の寄港中止で主に貸切バスやタクシーなどの運送業、観光サービス業、土産品などの小売業、飲食業などが打撃を受けているとみられる。

 

 大島紬の専門店「紬のとくやま」の徳山貴広店長(38)は「一昨年、昨年はクルーズ船が寄港した際に乗船客が入店してくれたが、今年はそれがない」と売上への影響を語った一方、「コロナが収束していない状況では、クルーズ船の旅行者に対し、地元で以前のようなおもてなしが十分にできるか懸念もある」とも述べた。

 

 14年に名瀬港へ初寄港した7万㌧級のサンプリンセスをはじめ外国船籍も近年は増えていたが、今年は一転。奄美大島に寄港する船で過去最大と見込まれていたバハマ船籍の「セレブリティ・ミレニアム」(9万940トン、乗客定員2218人)など予定していた5隻の外国船籍の寄港も、全て中止となった。

 

 これまで奄美市は市内店舗決済のキャッシュレス化や、観光地のWi-Fi(ワイファイ)環境の整備推進などクルーズ観光の発展を見据え、インバウンド対策も力を入れてきた。

 今年策定した市の総合戦略にも、クルーズ船受入体制の充実や、外国人観光客受入体制整備などを「攻めの施策」に位置付けていたが、来年以降もクルーズ観光の低迷が続いた場合、今後観光戦略の見直しを迫られる可能性もある。