テナントビルで家賃減額の動き 奄美市の飲食街

2020年05月02日

社会・経済 

飲食店など多くの店やビルが立ち並ぶ屋仁川通り=1日、奄美市名瀬

飲食店など多くの店やビルが立ち並ぶ屋仁川通り=1日、奄美市名瀬

 新型コロナウイルスの感染拡大で、奄美でも経済への影響が深刻化する中、飲食業などの負担を減らそうと、奄美市内のテナントビルのオーナーが5月や6月分の家賃を減免する動きがある。緊急事態宣言の発令で休業や時短営業中の店の経営者からは「大変な中、家賃の減額はありがたい」と歓迎の声がある一方、「ビルのオーナーにしわ寄せがいっただけ。本来は行政が対応すべきこと」といった声もある。

 

 奄美市名瀬の飲食街・屋仁川周辺の複数のビルのオーナーや奄美市社交飲食業組合によると、周辺の少なくとも4件のビルで、主に5月分や6月分の家賃の全額免除、半額などの措置をビル側が独自に行っている。

 

 バーやナイトクラブなど19店舗が入るソシアルビル(同市名瀬入舟町)は全店舗の5月分の家賃を全額免除した。ビルを管理する㈱ラ・ムール、グループ統括の平良亮さん(37)は「(家賃免除は)社長決断。お店の方には家賃の分を、従業員の補償に充ててほしいと伝えている」と話した。

 

 家賃負担が減ったある店の経営者は「負担が減りほっとした面もあるが、先行きが不安な状況は変わらない」と喜び半分、不安半分といった表情。

 

 テナントの経営者らから一同に家賃減免の要望を受けたという、別のビルのオーナーからは複雑な胸中を吐露する意見も。「こちらも決して余裕があるわけではない。持続化給付金などさまざまな支援もあるので、相談するにしても店側はそうした各種制度の申請もしっかりやってほしい。共栄共存との考えで全店舗一律での家賃減免に応じたが、やって当然ということではなく、他のビルのプレッシャーになってほしくない」と語った。

 

 ビルテナントの仲介なども行っている不動産会社「あっとホーム」(同市名瀬)の伊東末隆さん(72)は「ビルは固定資産税や建物補修などの維持費がかかり、新しいビルなどは借金の返済もある。オーナーにも情があって、店の困窮を聞いて家賃を減免する場合もあるだろうが、どうしても減免できないというビルも当然あるはず」と指摘。「今回の感染症の問題では全ての国民が影響を被っており、負担のしわ寄せがビル側に行くのも変な話。本来は国(行政)がもっとしっかり対応しないといけない」とも話した。