大島紬「知らない」21% 全島高校生へ意識調査 「着たい」声あるも9割経験なし

2019年09月29日

社会・経済 

紬協組青年部の指導で着付けに挑戦する生徒たち。着用体験のある生徒は大島紬への関心が高かった=2018年12月4日、古仁屋高校

紬協組青年部の指導で着付けに挑戦する生徒たち。着用体験のある生徒は大島紬への関心が高かった=2018年12月4日、古仁屋高校

 南海日日新聞社はこのほど、奄美群島の高校生1183人(男子616人、女子549人、無記入18人)へ大島紬に対する意識調査を実施した。回答者の21%(男子の27%、女子の14%)が本場奄美大島紬を「知らない」と答え、「着たことがない」という生徒は全体の約9割に上った。一方、大島紬を着てみたいとの回答は全体で43%あり、興味があっても触れる機会がないことが分かった。

 

 着たことがあると答えた中では「着付け体験などの学校行事」が最も高かった。着てみたいと答えたのは女子で62%と高く、着る場面としては「成人式」「結婚式」など式典や祝い事が多かった。男女共に「島唄関係」との回答もあった。

 

グラフ しかし、男女共に「夏祭り」「寝るとき」など浴衣との混同と思われる記述も多く、高校生の間で和服自体が身近な存在ではなくなっていることも読み取れた。

 和服の着付けを覚えたいと答えた生徒の割合は全体で48%で、男子で29%、女子は72%と高かった。

 

 将来紬産業に携わりたいと答えたのは全体のうち3%の41人だった。携わりたくないと答えた理由としては「興味がない・特に魅力を感じない」が最も高く、次いで「将来の夢が既に決まっている」という回答が多かった。

 

 そのほか「細かい作業が苦手」「大変そう」「賃金や労働環境に不安がある」などの回答があり、「仕事内容についてよく知らないから」という回答も多く見られた。

 

 携わりたいと答えた理由では「機織りを体験してみて残すべきだと感じた」「大島紬が好き」「伝統が無くなってほしくない」「奄美で仕事がしたい」「家族が産業に携わっている(いた)から」などの回答があった。

 

 「大島紬を着るとしたらどのような工夫があればいいと思うか」という項目では、柄やデザインについての回答が最も多く、次いで「値段を安くする」など金額に関する意見が目立った。

 

 「着やすくする工夫」「涼しい素材」「動きやすい着方」などのほか、「着用体験」「高校生だけの着物イベント」など着る機会を求める声も多かった。

 

 身近に紬従事者がいる、または過去に従事していたと答えたのは回答者847人のうち8%だった。

 

 大島紬の特徴や製造工程について「知っている」と答えたのは17%にとどまった。本場奄美大島紬協同組合の出張着付け体験などを授業に取り入れている奄美大島の高校・学年では「知っている」と答えた割合が他校・他学年よりも高い傾向にあった。

 

 結果を受け、紬協組の前田豊成理事長は「奄美大島以外の機屋は与論島に1軒残るだけで、大島以外の島では特に身近なものではなくなってきているのだろう」と分析。

 

 着付け体験が高校生の理解と関心を高めるのに効果を上げているとして「本場奄美大島紬は伝統産業であるとともに、奄美のアイデンティティーでもある。学校から要請があれば大島以外でも積極的に取り組みたい」と語った。

 

 調査は記述アンケート形式で、割合は小数点以下を四捨五入して計算した。地元高校生への大規模な調査は奄美で初めて。群島全高校に依頼し、大島北、奄美、古仁屋、喜界、徳之島、樟南第二、沖永良部、与論の8高校が協力した。