奄美大島ー喜界島間で血液融通へ 県立大島病院

2021年02月19日

社会・経済 

訓練で、模擬血液製剤を入れた血液搬送用冷蔵庫をタクシー運転手(左)に託す県立大島病院中央検査部の職員=16日午後7時ごろ、奄美市名瀬の同病院

訓練で、模擬血液製剤を入れた血液搬送用冷蔵庫をタクシー運転手(左)に託す県立大島病院中央検査部の職員=16日午後7時ごろ、奄美市名瀬の同病院

 喜界島で民間航空機が運航していない時間帯に血液製剤が必要となった場合、奄美大島の県立大島病院から民間タクシー、フェリーを使って同島に血液を搬送する模擬訓練「喜界島血液緊急融通シミュレーション」が16日、両島間であった。大島病院は「緊急融通が可能になることで、喜界島で輸血のための血液が入手できる時間枠が拡大する。離島がさらに困っている離島を助ける画期的な取り組み」としている。

 

 大島病院によると、喜界島の医療機関には血液製剤の備蓄はなく、血液製剤が緊急的に必要となった場合、県本土からの民間航空機が離発着できる時間帯にしか搬送できなかった。フェリーを活用して奄美大島から血液製剤を融通するには、名瀬港から喜界島向けフェリーが出港する50分前に要請があれば対応が可能となる。午前9時~午後5時の間に要請があった場合、喜界島で血液製剤が手に入るまでの時間は、従来より最大64%削減されるという。

 

 訓練は厚労省の血液製剤使用適正化方策調査研究事業を活用して3回目。搬送には田中タクシー(同市名瀬)、マルエーフェリーが協力。ATR(血液搬送用冷蔵庫)による血液製剤の温度管理、天候不良時の対応、病院間や運送会社間の連携などを課題とした。

 

 午後4時すぎ、喜界徳洲会病院から血液(O型400㍉㍑×2パック)の緊急融通要請を受けた大島病院中央検査部輸血管理室では、ATRに訓練用の模擬血液を入れて準備。午後7時、連絡を受けて病院を訪れたタクシー運転手にATRを託した。

 

 ATRはタクシーで名瀬港に運ばれ、フェリー職員へ。フェリーが通常より遅れて午後11時、喜界島早町漁港に入港すると、待機していた喜界徳洲会病院職員に引き渡され、同11時15分、同病院に到着した。

 

 訓練を主催した県合同輸血療法委員会世話人で県立大島病院の大木浩麻酔科部長は「今回の結果を踏まえ、さらに喜界島と緊急時の融通ができるようなコミュニケーションを図っていきたい。今後は他の離島間との体制づくりも考えていければ」と話した。