奄美群島の産業振興考えるシンポジウム

2019年02月03日

社会・経済 

鹿大の教授らが奄美群島の産業について課題や展望を述べたシンポジウム=2日、奄美市名瀬

鹿大の教授らが奄美群島の産業について課題や展望を述べたシンポジウム=2日、奄美市名瀬

 奄美群島の「果樹」「漁業」「紬・糖・焼酎」「情報通信」分野の課題や将来の展望について考えるシンポジウムが2日、奄美市名瀬のAiAiひろばであった。鹿児島大学の教授と准教授の4人が登壇。「産業資源と奄美の文化を結び付けることで商品価値が高まる」「研究者と地元の連携を深め、経済発展につなげよう」などの提言があった。

 

 シンポジウムは奄美群島振興開発特別措置法の延長を控える中、奄美の各産業について来場者と一緒に考えようと鹿大国際島嶼教育研究センターが主催。約50人が聴講した。

 

 鹿大農学部の山本雅史教授は奄美群島のかんきつ類について、在来種のシークワサーと海外導入種が交雑した品種が多数存在していると発表。「健康効果や香りを生かした加工品の開発が期待できる。商品価値とともに、先祖から受け継いできたみかんという文化的な側面からも見直し島外へ発信してほしい」と語った。

 

 水産学部の鳥居享司准教授は、奄美群島の漁業加工品は販路確保が課題と指摘。「漁業関係者だけで漁獲、加工、販売を担うのは難しい」として地元ホテルや飲食店との連携を提唱した。

 

 法文学部の山本一哉教授は紬・糖・焼酎の3分野について、出荷量や生産量が減少している現状を報告。海外も含めた市場開拓が必要だと述べた。

 

 学術情報基盤センターの升屋正人教授はインターネット環境の整備は観光客の呼び込みのほか防災やまちづくり、医療・福祉、教育の面でも重要と強調。通信技術の発展で都心部以外でも仕事を生み出せるとして、「今後は働き手の確保が課題」と話した。

 

 東美佐夫奄美市副市長は「分室の設置によって、大学が実施する奄美の研究が地元に還元されるようになった。今後も研究のフィールドを提供して相互の連携を深め、地域の発展につなげたい」と講評した。

 

 総合討論では参加者と教授陣が語り合い、「中・高校生が地元の産業に携わり歴史や文化を学ぶ機会が必要」「研究者や大学と地域の子どもたちが触れ合う機会を増やしたい」などの意見が出された。