奄美黒糖焼酎蔵や酒販も苦境 飲食店の時短営業、影響広がる

2021年01月28日

社会・経済 

黒糖焼酎が並ぶ飲食店のカウンター=25日、奄美市名瀬

黒糖焼酎が並ぶ飲食店のカウンター=25日、奄美市名瀬

 新型コロナウイルス対策で奄美市の多くの飲食店が時短営業に切り替わる中、店に酒を販売している小売店や奄美黒糖焼酎の酒造会社も苦境に立たされている。関係者からは「コロナで昨年から厳しい状況にあり、追い打ちを掛けられた状態」「対策はいろいろ考えているが自助努力には限界がある」など悲痛な声が上がっている。県の時短要請に伴う協力金は対象地域の飲食店に限定されており、「感染予防なら島全体、関連業も含めてやらねば効果がなく不公平だ」など支援の拡大を求める意見もあった。

 

 営業時間の短縮要請は県民の接触機会を減らすのが目的。店舗数などから対象地域を奄美市など県内5市に決めた。期間は25日~2月7日で、要請に応じた店には店舗ごとに協力金56万円(1日4万円)が支払われる。期間中は午後9時閉店とし、酒類提供は午前11時から午後8時までとなる。

 

 奄美市名瀬の繁華街に近い富田酒造場(富田恭弘社長)の富田真行杜氏(とうじ)(36)は、「酒造と飲食店は卸業者や小売店を通してつながっており、時短営業や休業の影響は大きい」と指摘。「昨年に続き年明け以降から一層厳しい状況が続いている。今は耐えるしかないが、小売り店などへの支援があれば酒造としても多少は助かる」と語った。

 

 島内での消費割合が大きいという奄美市名瀬の西平酒造(西平功社長)ではコロナ禍を受けて、インターネットを活用した情報発信や取引先のブランドで自社製品を展開するOEM事業で島外出荷を増やす取り組みに力を入れている。

 

 西平せれな杜氏(33)は「島内での消費落ち込みは、これからさらに影響が出てくると覚悟している。島内の異業種間コラボなども積極的に提案し苦境を乗り越えたい」と語った。

 

 自治体の範囲や関連業への支援拡大を求める声も上がっている。奄美市名瀬から島内外の飲食店に黒糖焼酎などを販売している酒屋まえかわの前川晴紀社長(55)は、「新たな需要喚起など自助努力は続けている。どこまでを対象とするかは難しい問題だが、行政の線引きに不満を持つ人が出るのは当然だ」と話した。