輪禍のクロウサギ移送 野生復帰へ 平川動物公園で治療 奄美大島

平川動物公園に移送されたアマミノクロウサギ(環境省奄美野生生物保護センター提供)

 奄美大島で今年2月に交通事故に遭って保護された国の特別天然記念物アマミノクロウサギが29日、鹿児島市の平川動物公園に移送された。奄美市の動物病院で負傷した後ろ脚の手術を受けて治療を続けていた。環境省奄美野生生物保護センターは「リハビリを兼ねた長期的な飼育観察が必要と判断した。今後の回復状況をみて野生復帰できるか検討する」としている。

 

 クロウサギは2月8日夜、宇検村湯湾の県道で保護された。目立った外傷はなく、右後ろ足の股関節を脱臼しており、交通事故に遭ったとみられる。関節炎になる恐れがあったため、奄美市名瀬の「ゆいの島どうぶつ病院」で3月に大腿骨の上部を切除する手術を受けた。

 

 クロウサギは雄の成獣で体重1・6キロ。保護時より体重は減ったが食欲はあり、体調は落ち着いているという。奄美野生生物保護センターによると、歩いて移動することはできるようになったものの、運動機能の回復が十分ではないため、平川動物公園に移すことを決めた。

 

 平川動物公園には29日、空路移送された。同施設では奄美大島と徳之島から移送されたクロウサギ3匹を保護しており、飼育個体は計4匹になった。傷病個体の受け入れを開始した2007年以降で最多という。

 

 福守朗園長は「収容能力には限界がある。事故に遭ったりせず、安心して島で暮らせるのが一番」と指摘。移送された個体について「まずは環境に慣れてもらうことを最優先したい。体力が回復して、最終的には島に戻って野生復帰できればいい」と話した。

 

 奄美大島では2020年に確認されたクロウサギの交通事故が50件と過去最多を記録した。今年は5月末時点で20件と前年同期(18件)を上回っている。奄美野生生物保護センターの田口知宏国立公園管理官は「クロウサギは交通事故に遭うと死亡する確率が高い。助かっても重大な障害が残ることが多いということを理解してもらい、夜間の運転はよりいっそう気を付けてほしい」と呼び掛けた。