輪禍クロウサギ、手術で回復 初事例、奄美大島の野生復帰へ

交通事故で負傷して手術を受けたアマミノクロウサギ=1日、奄美市名瀬の「ゆいの島どうぶつ病院」

 奄美大島で今年2月に交通事故に遭って保護された国の特別天然記念物アマミノクロウサギが、負傷した後ろ脚の手術を受けて順調に回復している。今後は本土の動物園に移送して治療を続け、野生復帰を目指す。手術を行った「ゆいの島どうぶつ病院」(奄美市名瀬)の獣医師らは「リハビリをして元気になり、将来は元の場所で放されることを期待している」と述べた。

 

 クロウサギは2月8日午後7時ごろ、宇検村湯湾の県道上で動けなくなっているのを地元住民が保護し、環境省奄美野生生物保護センターに連絡。同センターの職員が翌朝、ゆいの島どうぶつ病院に運んだ。

 

 保護されたのは雄の成獣で体重1・8キロ。目立った外傷はなかったが、右後ろ脚の股関節を脱臼しており、交通事故に遭ったとみられる。同病院で投薬治療を行って経過を観察していたが、脱臼が続くと関節炎になる恐れがあるため、3月3日に骨盤と接続する大腿骨の上部約2㌢を切除する手術を行った。環境省によると、クロウサギの手術は初めてとみられる。

 

 手術を行った佐藤花帆獣医師(27)は「特別天然記念物の手術でプレッシャーはあったけれど、無事に終わってほっとした」と話す。術後3カ月が経過して、「順調に回復している。股関節の痛みがなくなり、筋肉が戻れば歩けるようになる」と期待を込めた。

 

 交通事故に遭ったクロウサギが、けがから回復するケースは珍しい。同病院で野生生物を担当する鳥本亮太獣医師(27)は「事故に遭ったクロウサギは死亡することが多い。病院に搬送されても、ほとんどは餌が食べられずに亡くなってしまう」と指摘する。

 

 奄美野生生物保護センターによると、奄美大島で2020年に確認されたクロウサギの交通事故死は50件と過去最多を記録した。今年は5月末現在で19件と、前年同期(18件)を上回るペースで事故が起きている。

 

 今年夏の世界自然遺産登録を見込む奄美大島では、クロウサギなど希少種の交通事故が大きな課題となっている。同センターの阿部愼太郎所長は「一人一人が気を付けることで事故は減らせる。走り慣れた道でも、周囲に気を配りながら運転してほしい」と呼び掛けた。