ウミガメ産卵 過去最少に 奄美海洋生物研 19年調査

2019年11月24日

奄美大島のウミガメ産卵状況(奄美海洋生物研究会調査)

奄美大島のウミガメ産卵状況(奄美海洋生物研究会調査)

 奄美海洋生物研究会(興克樹会長)は23日までに、奄美大島のウミガメの上陸、産卵などに関する2019年の調査結果をまとめた。産卵回数は293回と前年より91回減少し、調査を開始した12年以降で最少だった。特に減少が顕著なアカウミガメについて、同会は餌場である東シナ海での活発な漁業活動による餌資源の減少や混獲の影響を懸念し、「今後も推移を注視する必要がある」としている。

 

 19年の産卵回数の内訳はアカウミガメ116回(前年137回)、アオウミガメ166回(同217回)、不明11回(同30回)。全体ではこれまで最少だった15年の355回を下回り、最多だった12年(1081回)の27・1%にとどまる。

 

 減少傾向が続くアカウミガメについて、同会は東シナ海での漁業活動のほか、中国で18年に発覚した大規模な密猟問題にも懸念を示した。興会長は「数年おきに産卵するウミガメの生息数の増減については中期的な分析が必要。継続した調査が求められる」と指摘した。

 

 19年のリュウキュウイノシシによるウミガメの卵の食害状況は、6カ所の浜で産卵巣47件の被害が確認された。前年より35件少なく、全産卵巣に占める卵の食害も16%と前年を5・4下回った。産卵回数の減少に加えて、台風による産卵巣の消失が影響したとみられる。

 

 浜別では請島のケラジ地区が18件で最多。加計呂麻島の西阿室大浜10件、請島イキンマ地区8件と続く。請島の全3カ所の浜では12年から毎年ほぼ全ての産卵巣で被害が確認されている。大和村のヒエン浜では産卵巣にネットを設置する捕食防止対策を実施。9件中6件の卵を保護できた。

 

 19年に食害が確認された浜は全て前年も被害が発生しており、採食行動が恒常化しているとみられる。興会長は「その地域の産卵個体群の減少が懸念される。保護対策の強化が求められる」と強調した。