ザトウクジラ来遊  奄美大島近海

2018年01月19日

迫力満点のパフォーマンスを繰り広げたザトウクジラ=18日、奄美市笠利町の土盛海岸沖

迫力満点のパフォーマンスを繰り広げたザトウクジラ=18日、奄美市笠利町の土盛海岸沖

 奄美大島近海でザトウクジラの来遊シーズンが始まった。奄美市笠利町の土盛海岸沖では18日、3頭の群れが姿を現し、大海原を悠然と泳ぎながら海面上に潮を噴き上げたり、豪快にジャンプしたりと迫力満点のパフォーマンスを繰り広げた。4月上旬ごろまで見られるという。

 

 ザトウクジラは体長12~14㍍、体重30㌧超にもなる大型のヒゲクジラ。頭部のこぶ状の突起と長い胸ビレが特徴。夏季はロシアやアラスカなどの冷たい海で餌を食べ、冬季に繁殖や子育てのため、国内では沖縄や小笠原などの暖かい海域へ移る。奄美近海では12月から4月ごろにかけて見られる。

 

 環境省の委託を受けて奄美大島近海でザトウクジラの出現状況を調査している奄美クジラ・イルカ協会(興克樹会長)によると、2018年シーズンは昨年12月9日に初確認。同日までに37群63頭を確認した。

 

 18日は調査を兼ねたホエールウオッチングツアーがあった。観光客ら7人が午前9時に奄美市名瀬の小湊港を出港し、約1時間後、土盛海岸沖でクジラ3頭を確認。長い胸ビレで海面をたたく「ペックスラップ」や大きくジャンプする「ブリーチング」など船上で圧巻のパフォーマンスを楽しみ、海に飛び込んで泳ぎながら観察する「ホエールスイム」に挑戦する参加者もいた。

 

 友人と参加した神奈川県横浜市の上真理子さん(58)は初めてのホエールウオッチングに「意外と近くで見られた。めったにできない体験ができてよかった」と感激していた。

 奄美大島では冬場の新たな観光の可能性を探ろうと、南部のダイビング事業者らが中心となって2006年に鯨類の目撃情報の集積を始めた。13年に同協会が発足。加盟事業者らが出現状況を調べて情報を共有し、クジラにストレスを与えないように自主ルールを設けてホエールウオッチングのツアーを展開している。

 

 同島近海でクジラの出現確認数は増加傾向が続き、17年シーズンは前季の1・6倍の683頭と過去最多を記録。ホエールウオッチングの参加者も年々増加し、同年は初めて1千人を超え、1588人に達した。18年シーズンは2千人の参加を見込む。

 

 興会長は「森も海も種の多様性が高く、いろんな生き物が見られる」と奄美の自然の魅力を語り、「ホエールウオッチングの参加者は今後も増加が見込まれる。お客さんに満足してもらうことでリピーターにつながる。年間を通じて奄美の魅力を発信できる」と観光資源としての活用に期待を示した。