ノネコ対策でシンポジウム 奄美大島

2018年07月07日

 奄美の猫問題について意見交換したシンポジウム=5日、奄美市名瀬

奄美の猫問題について意見交換したシンポジウム=5日、奄美市名瀬

  希少な野生生物を襲って生態系を脅かす野生化した猫(ノネコ)の問題を考えるシンポジウムが5日夜、奄美市名瀬のAiAiひろばであった。研究者らが国内外で起きている猫問題の実態や対策の事例を報告。地元関係者を交えたパネルディスカッションではノネコ対策が本格化する奄美大島の課題を話し合い、パネリストらが人と野生生物が共生する島づくりを目指し、「(猫問題に)島全体で取り組むことが必要」との声明を発表した。

 

 シンポジウムはノネコ問題の普及啓発を目的に、専門家らでつくる外来ネコ問題研究会(会長・山田文雄森林総合研究所特任研究員)などが主催。塩野﨑和美さん(奄美野生動物研究所)、岡奈理子さん(山階鳥類研究所)、亘悠哉さん(森林総合研究所)らが講演した。

 

 塩野﨑さんは国内外の島しょで絶滅危惧種の脅威となっている猫の問題と対策の事例を報告。小笠原諸島(東京都)、御蔵島(同)、天売島(北海道)など、猫を捕獲して譲渡先を探す対策が主流の日本に対して、海外では銃や捕殺わなを使って短時間に処分する方法が「人道的」とされていると説明。奄美大島で今月にも始まるノネコの捕獲と殺処分も含めた対策を「国内初の取り組み」として理解を求めた。

 

 岡さんはオオミズナギドリの繁殖地の御蔵島で深刻なノネコによる捕食被害を報告。繁殖制限を目的にノネコを捕獲して不妊手術を行うTNRの取り組みが続くものの、「今の規模では野生生物の減少を防ぐ効果はない」と指摘。「外猫のいない島に戻すことが不可欠」と現状の認識や周知の必要性を訴えた。

 

 亘さんは奄美大島でマングース対策が進んで在来生物が回復していると報告。ノネコ対策にも「長期的な展望が不可欠」と強調し、「本物の森林生態系を取り戻すには、あらゆる機関の連携が必要だ」と呼び掛けた。

 

 パネルディスカッションは山田会長の司会進行で、発表者と地元の獣医師や民間団体の代表らを交えて奄美の猫問題について話し合った。最後に▽奄美大島ノネコ管理計画への理解と支援▽飼い猫の登録・マイクロチップ装着・室内飼育―など4項目を盛り込んだ声明を発表した。