徳之島で世界自然遺産シンポジウム

2019年12月08日

世界自然遺産

自然保護に関する学習成果を発表する児童ら=7日、徳之島町亀津

自然保護に関する学習成果を発表する児童ら=7日、徳之島町亀津

 「世界自然遺産シンポジウムin徳之島~親子で考える世界自然遺産~」が7日、徳之島町文化会館であった。専門家2氏の基調講演や児童生徒の研究発表があり、講演では多くの希少野生動植物が生息・生育し、世界自然遺産登録を目指している「奇跡の島」の価値について解説。島の自然を人類の宝として未来へ継承していくため、官民一体となって保全しようと、来場者へ理解と協力を呼び掛けた。

 

 世界自然遺産登録に向けた住民の意識啓発を目的に、県と徳之島地区自然保護協議会が主催。住民ら約350人が来場した。

 

 基調講演は、鹿児島大学特認教授の星野一昭氏が「徳之島の宝~島の子どもと豊かな自然」、国立森林総合研究所主任研究員の亘悠哉氏が「みんなで残したい! 徳之島の自然のすごいところ」を題に講演した。

 

 星野氏は徳之島の自然の価値について「森林面積の割合が島全体の約4割しかない徳之島に、ここでしか見ることのできない生き物が残ってきたことは奇跡であり、島の誇り」と強調。自然の保全については「ペットの適正飼養や夜間の安全運転など、自分でできることを実践することが大切」と島民の理解と協力の必要性を訴えた。

 

 亘氏は▽ラン類が豊富▽オキナワウラジロガシの大群落がある▽アマミハナサキガエルは奄美大島より大きい―など、研究者目線で徳之島のすごさを列挙。残念な点として希少動物のロードキルや猫対策など人間が原因となっている課題を挙げ「徳之島の未来は私たちにかかっている」と述べた。

 

 樟南第二高校1年の原根楓さんは、ナイトツアーや磯歩きなどの体験から「島の自然について少し学ぶだけでも、外来種を発見するなど見方が変わる。大自然が身近にあることは私たちの特権。自然を大切に守り有効に活用できれば、もっと誇りに思える島に近づく」と発表した。

 

 天城小学校の5年生14人は「日本の面積の1%にも満たない小さな島に多くの珍しい動植物が息づく」として徳之島の希少動植物が生き残った背景について劇を交えて発表。自然の保全活動に向け▽自然を知ろう▽環境保全活動に取り組もう―などと提案し、「島を守れるのは私たち。一緒に守っていこう」と呼び掛けた。

 

 花徳小の3、4年生と亀津小の4年生は、学校周辺の河川に生息する生物について研究成果を披露。最後に同協議会の政武文会長は「世界自然遺産登録はゴールではない。島の自然を未来へつなぐのは私たちの役目」と力を込めた。