外来生物考えるシンポ 侵入や防除対策で意見交換 天城町

2019年06月30日

専門家らが外来種対策について意見交換したシンポジウム=29日、天城町役場

専門家らが外来種対策について意見交換したシンポジウム=29日、天城町役場

  【徳之島総局】天城町など主催のシンポジウム「徳之島の外来種と希少種~島の自然と暮らしを守るために私たちができること~」が29日、同町役場であった。基調講演やパネルディスカッションがあり、来場者は人の生命も脅かす危険性がある外来生物の侵入や防除対策を考えた。

 世界自然遺産登録を目指す島として、外来動植物の問題意識啓発と対策の情報共有などを図ろうと開催。地域住民ら約70人が来場した。

 シンポジウムは2部構成。第1部は国立環境研究所生態リスク評価・対策研究室室長の五箇公一氏が外来生物や感染症の国内侵入をテーマに基調講演した。

 五箇氏は物流や人の流れの国際化に伴い、ヒアリやセアカゴケグモなど特定外来生物が国内に侵入している事例について「定着した特定外来生物の根絶成功事例はほとんどなく、水際対策が最も重要」と説明。エボラ出血熱や重症急性呼吸器症候群(SARS)など目に見えない感染症の世界的流行については「人間の活動で生物多様性が破壊され、新興の感染症が世界に広がった」と持論を展開した。

 人獣共通感染症の一つで、猫を介してダニ媒介性感染症の重症熱性血小板減少症候群(SFTS)に感染、死亡した事例を紹介。「徳之島は猫がたくさんいて、既にマダニもいる。SFTSウイルスが入ってくればリスクが高い。人と生物の距離感を大切に」と訴えた。

 第2部は沖縄大学法経学部准教授の城ヶ原貴道氏を進行役にパネルディスカッションがあり、五箇氏のほか、鹿児島大学大学院教授の宮本旬子氏、国立森林総合研究所主任研究員の亘悠哉氏、環境省沖縄奄美自然環境事務所野生生物課長の岩浅有記氏がパネリストを務め、会場からの質問に回答する形式で意見交換した。

 外来植物の駆除について宮本氏は「全てを駆除するのは予算や人員の面から現実的ではなく、自然保護すべきエリアで繁茂する植物を取り除く努力が必要」、外来生物を活用した商品開発について亘氏は「ビジネス利用をしようとすると、材料確保のため外来種を増やそうという意識が生まれる。活用は危険」と回答した。

 島内林道へのゲート設置について岩浅氏は「人の進入を制限することで一定の外来生物対策になるほか、盗採・盗掘防止や廃棄物の投棄防止にもなる」と述べた。