奄美市名瀬で希少野生生物保護増殖検討会

2018年02月24日

アマミノクロウサギの死骸確認数について報告があった保護増殖検討会=23日、奄美市

アマミノクロウサギの死骸確認数について報告があった保護増殖検討会=23日、奄美市

 環境省の奄美希少野生生物保護増殖検討会(座長・石井信夫東京女子大学教授、委員6人)の会合が23日、奄美市名瀬であった。同省は奄美大島と徳之島に生息するアマミノクロウサギの分布域に拡大傾向が見られると報告。一方で、両島の2017年の死骸確認数は00年以降の調査で最多の99匹に上った。死亡原因は交通事故が34匹で最も多く、次いで猫や犬による捕殺が21匹と、ともに過去最悪だった。

 

 同省は種の保存法で国内希少種に指定したアマミノクロウサギの保護増殖事業で、両島で沢沿いのふんの数の調査や自動撮影カメラの設置、個体の目撃、痕跡情報の収集など分布域の確認を進めている。

 

 報告によると、17年は両島でともに新たな分布地点が確認された。奄美大島では大規模な南部の生息地と分断された北部との境界で目撃情報やふんの確認があり、「今後さらに分布が拡大すれば、北部と南部の生息エリアがつながる可能性が高い」としている。徳之島ではこれまで確認のなかった海岸近くの県道や集落内で目撃されており、分布の拡大に期待を示した。

 

 17年の島別のクロウサギの死骸確認数は奄美大島84匹(前年45匹)、徳之島15匹(同14匹)で、特に奄美大島での増加が目立つ。死亡原因では、交通事故は奄美大島が前年より9匹多い26匹、徳之島は過去最多だった前年と同じ8匹で、両島合わせて過去最多だった09年の27匹を上回った。

 

 猫や犬による捕殺は奄美大島19匹、徳之島2匹。これまでに両島合わせて過去最多だった14年の計18匹から減少傾向が続き、死亡確認数がゼロだった前年から一転し、急増した。

 

 同省は「今後もクロウサギの生息範囲の拡大に伴い、未確認の地域でも出現に注意する必要がある」と指摘した。

 

 会合では他に、アマミノクロウサギによる果樹のタンカンなど農作物の食害について報告があり、同省は関係機関で対策の検討を進める方針を示した。希少種を襲う野生化した猫(ノネコ)対策について両島の取り組みの報告があった。