希少サンゴの群集見つかる/分布の最北限記録に/大島海峡

2018年03月10日

大島海峡で見つかった最北限記録のアミトリセンベイサンゴ(藤井琢磨さん提供)

大島海峡で見つかった最北限記録のアミトリセンベイサンゴ(藤井琢磨さん提供)

  奄美大島南部の大島海峡で、世界的に希少なアミトリセンベイサンゴの群集が見つかったことが分かった。これまでに国内では沖縄県西表島周辺海域のみ、世界的にも東南アジアだけで生息が確認されており、分布の最北限記録となる。鹿児島大学国際島嶼(とうしょ)教育研究センター奄美分室の藤井琢磨特任助教らが2月28日発行の日本動物分類学会誌で発表した。

 

 アミトリセンベイサンゴは西表島の網取湾で見つかり、1990年に新種と記載された。東南アジアでも確認されているのは数カ所のみ。生息域が局所的で極度に分断されているため、国際自然保護連合(IUCN)のレッドリストで準絶滅危惧種、環境省は絶滅危惧Ⅱ類に位置付けている。西表島以北、奄美群島では今回が初記録。

 

 藤井助教らは鹿大の薩南諸島の生物多様性とその保全に関する教育研究拠点整備プロジェクトの一環で、2016年度から奄美大島周辺海域でサンゴの調査を行っている。アミトリセンベイサンゴは同年3月上旬、大島海峡中央部の瀬戸内町阿鉄湾内の水深30㍍付近で、イシサンゴ群集の中に直径約3㍍の1個体群を見つけた。

 

 アミトリセンベイサンゴはこげ茶色で薄い葉状の群体を形成する。近縁種と比べて厚さ1㌢未満と繊細で折れやすい。骨格の上面に緻密な溝が平行に刻まれている。生息するのは水深30㍍以上の深海で人目に付きにくく、生態は不明なことが多いという。

 

 藤井助教は本種の発見について「奄美大島周辺の海洋生物多様性、海洋資源が想定以上に豊かな可能性を示している」と述べ、「内湾の環境が良好な状態で残されている奄美大島、加計呂麻島で、他にも見つかる可能性は十分にある」と期待を示した。