金作原で利用規制試行 奄美大島

2019年02月28日

利用規制の試行が始まり、観光客にチラシを配布する関係機関の職員ら=27日、奄美市名瀬

利用規制の試行が始まり、観光客にチラシを配布する関係機関の職員ら=27日、奄美市名瀬

  2020年を見込む奄美・沖縄の世界自然遺産登録による観光客の増加を見据えて、遺産候補地となっている奄美市名瀬の金作原国有林で27日、関係機関による利用規制の試行が始まった。観光客に認定ガイドの同行が必要となり、車両台数や人数を制限して過剰な利用を抑える。初日は国、県、奄美市の職員らが現地や奄美空港でチラシを配布し、協力を呼び掛けた。

 

 金作原一帯は天然の亜熱帯照葉樹の森に多様な動植物が生息・生育している。市街地からも近く、奄美大島を代表する自然観察スポットとして知られ、訪れる観光客は年々増えている。

 

 利用規制は、環境負荷の軽減と、混雑の緩和による質の高い自然体験の提供が目的。国、県、奄美市、民間団体などで設置した奄美大島利用適正化連絡会議で決めた自主ルールに基づいて試行を始めた。

 

 ルールでは金作原を利用する際に、奄美群島エコツーリズム推進協議会の認定ガイドの同行が必要になる。同じ時間帯に利用できるのはガイド車両と団体ツアーの貸し切りバス計10台まで。利用時間は120分以下、ガイド1人当たりの案内人数は15人以下。ガイドの同行については、貸し切りバスは移行期間を経て10月から適用する。

 

 初日は認定ガイド同伴の6組と団体ツアー2組の計68人が金作原を訪れた。レンタカーやタクシーで訪れた観光客もいたが、関係機関の職員らが利用規制について説明したところ、そのまま引き返したという。

 

 ガイドの案内で自然散策を楽しんだ静岡県伊東市の飲食店経営、椙本清さん(62)、恭代さん(61)夫妻は「奄美独特の植物などが見られてよかった。また来たい」と笑顔を見せ、利用規制については「ガイドの同行は大賛成。一人で見るより奥深い発見がある。入山料や協力金を設けて保護にお金を使ったほうがいい」と話した。

 

 規制に法的拘束力はない。連絡会議は今後、条例制定なども含めたルールの強化策を検討する方針。事務局の県自然保護課奄美世界自然遺産登録推進室は「利用状況をみながら関係機関で意見交換し、ルールを改善していきたい」としている。