奄美民謡大賞2年連続中止 予選大会直前にコロナ急拡大 「悔しい」応募者ら落胆の声

2022年01月19日

芸能・文化

自宅で島唄の練習に励む西倖芽さん(提供写真)

新型コロナウイルスの感染拡大を受け、第43回奄美民謡大賞(南海日日新聞社、奄美市教育委員会共催)の中止が決定した。若い世代の出場者も多い同大賞は現代の島唄継承を支える一大イベント。新型コロナ禍で大会に向けて練習に励んできた人たちは、2年連続の開催中止に悔しさをにじませた。 (餅田彩葉)

 

■奄美大島で感染急拡大

 

2020年はビデオ審査のみの実施、21年は中止となった同大賞。今年は例年通り開催を予定していたため、昨年11~12月に出場者を募集し、全国から4部門計210人(少年48人、青年42人、壮年41人、高年79人)の応募が寄せられていた。

 

今月8日に予選大会の開幕を控えていた矢先、奄美市を中心に奄美大島で新型コロナの感染者が急増。大会の実施が困難となり、2大会連続の中止が決まった。

 

今回初めてエントリーしていた赤徳小6年の西倖芽さん(12)は「よいすら節を歌う予定で(島唄教室に)週1回通って、家でも練習してきた。6年生の最後に大会に出たかったので悔しい」と落胆した。

 

「民謡大賞は小学生のころから毎年出場している。伝統ある大会に2年間出場できないのは残念」と話すのは、昨年12月に行われた民謡民舞全国大会で青年の部優秀賞を受賞した朝岡明紀さん(20)=大阪府。

 

朝岡さんは「大会に出場するために練習を重ねている人も多い。(大会中止によって)島唄への意欲が下がってしまうのでは」と懸念を示した。

 

■島唄学ぶ原動力

 

同大賞の始まりは1975(昭和50)年、唄者の発掘を目的に開催された奄美民謡新人大会。80年に奄美民謡大賞に名称が変更され、当時東京都で行われていた日本民謡大賞の登竜門として注目を集めた。

 

大会出場者数は80年の26人から2000年には106人に。群島外からのエントリーも増え、09年からは関東や関西も含めた6会場で予選大会を実施している。

若い世代の活躍も顕著だ。1994年から出場枠が4部門となり、2003年には少年・青年の部の合計出場者数が壮年・高年の部を初めて上回った。06年から11年にかけては青年の部から相次いで大賞受賞者が選ばれた。

 

大会の在り方をめぐっては、シマ(集落)で受け継がれてきた本来の島唄が画一化してしまうのではとの声もあったが、生活に根付いた島唄に触れる機会が少なくなっている今、同大賞への出場という目標が若い世代が島唄を学ぶ原動力となっている。

 

■コロナ下での継承活動

 

新型コロナ発生以降、さまざまな伝統行事や文化イベントが規模縮小・中止に追い込まれた。集会が制限され、生の島唄に触れたり学ぶ機会も減少している。 龍郷町で島唄・三味線教室の講師を務める平久美さん(70)によると、新型コロナ禍ではマスクの着用や消毒を徹底して練習を実施していたが、現在は感染拡大に伴い対面での島唄練習ができず、不自由な状態が続いているという。

 

「子どもたちが島唄を学んでいる姿に元気をもらっていたので寂しい」と平さん。生徒たちには自宅での個人練習を続けるよう呼び掛けている。

 

平さんは「大会は島唄の質の向上にもつながり、島の伝統文化の継承を助ける力になっている。コロナの状況に油断はできないが、これからも島唄を伝え続けたい」と今後の継承活動に意欲を見せた。