米統治下の奄美に触れ注目 中島京子著・小説「やさしい猫」

 作家中島京子さんの著書「やさしい猫」が19日、中央公論新社から出版された=写真。大きな事件に見舞われた家族を描く長編小説で、奄美にルーツを持つ弁護士が登場。戦後、米軍統治下にあった奄美の歴史にも触れ、奄美関係者の間で話題を呼んでいる。

 

 シングルマザーの保育士ミユキさんと娘のマヤさん、8歳年下の自動車整備士クマさんの物語。ミユキさんとクマさんが出会い、結ばれ、家族3人の穏やかな暮らしが続くはずだったが、クマさんがスリランカ出身の外国人だったことで、その幸せが突然奪われてしまう。家族は国を相手に裁判を起こす。

 

 クマさんの代理人を務める恵弁護士は奄美2世という設定。物語の中で、恵弁護士は自身の父親が奄美の米軍統治下時代、「密航船」で本土に渡った経験を語る。

 

 執筆に当たり、入管や非正規滞在外国人の現状に詳しい奄美2世の指宿昭一弁護士に話を聞き、奄美の歴史への理解を深めたという中島さんは「知識として知っていたが、その時に島に生きる人々にもたらされた混乱について、私は考えたことがなかった。忘れてはいけない歴史だと感じ、小説に取り入れた。奄美について書いたところは、語り手の女子高校生が『国境って何だろう』と考える重要なシーンになっている」と話した。

 

 恵弁護士のモデルとなった指宿弁護士は「国境っていったい何? 外国人には人権はないの? ということを考えさせられる小説。『国境』の変更を経験した奄美の皆さんにもぜひ読んでほしい」と話した。

 

 「やさしい猫」は四六判416㌻、定価2090円(税込み)。