60年ぶり「組踊」上演 和泊町畦布

2019年09月16日

芸能・文化

畦布で地元住民によって約60年ぶりに上演された組踊「高平良御鎖」=15日、和泊町

畦布で地元住民によって約60年ぶりに上演された組踊「高平良御鎖」=15日、和泊町

 【沖永良部総局】琉球芸能・組踊「高平良御鎖(たかてらうざし)」が15日、和泊町畦布の敬老会で、約60年ぶりに地元住民によって上演された。同集落で古くから引き継がれながら、半世紀余り途絶えていた組踊を貴重な伝統芸能として見直し、継承する機運が高まっている。

 

 組踊は琉球王国の芸能に日本の能・狂言なども取り入れ、創作された歌舞劇。初演は1719年で今年が300年の節目に当たる。2010年にユネスコ(国連教育科学文化機関)の無形文化遺産に登録された。

 

 組踊が沖永良部島に伝わった明確な由来は不明だが、島内では同集落でのみ長い間受け継がれてきたとされる。一方、終戦後の高度経済成長期に多くの若者が出稼ぎで島を離れ、伝統芸能の担い手が減少し、集落での組踊が途絶えたという。

 

 60年ぶりの再演は、元小学校教諭で当時の組踊を知る同集落在住の中村スエさん(86)らが発起人となり、集落の青壮年団や婦人会に協力を呼び掛けて実現。集落敬老会での初披露に向け、約半年前から練習を重ねてきた。

 

 集落の生活館であった敬老会には住民ら約150人が参加。演目の「高平良御鎖」は2人の兄弟による父のあだ討ちの物語。華やかな衣装に身を包んだ立方(役者)が、身振り手振りを交えつつ古い沖縄言葉のせりふを唱えたり、優美な琉球舞踊を披露したりして会場を魅了した。

 

 主演の一人、清水誠さん(37)は「せりふは、沖永良部の言語と全く異なる古い沖縄言葉なので覚えるのがとても大変だった。中村さんから引き継いでいただいたものを、今回限りにせず次の世代にもつなげていけたら」。中村さんは「この組踊を次の世代に引き継ぐため、私は今日まで長生きしてきたのかなと思う。若い人たちに感謝。本当に感無量」とうれし涙をこぼした。

 

 17年から畦布の組踊を調査・研究する沖縄県立芸術大講師の鈴木耕太さん(40)は「演出は微妙に異なるが、台本は沖縄と同じで、せりふも首里(沖縄本島中南部)の古い言葉が使われていた。沖縄県以外で、地元の人によって組踊が上演されるのを見たのは私も初めてで非常に感動した」と話した。