知的書評合戦で県4連覇 大島高校

2020年12月08日

子ども・教育

県高校生ビブリオバトル大会で2連覇した畑さん(写真中央)と、ブロック優勝した橋口さん(同左)と岡山さん(同右)=3日、大島高校

県高校生ビブリオバトル大会で2連覇した畑さん(写真中央)と、ブロック優勝した橋口さん(同左)と岡山さん(同右)=3日、大島高校

 愛読書の魅力を発表し、聴衆をいかに読みたいと思わせられるかを競う「ビブリオバトル(知的書評合戦)」。11月28日に鹿児島市で開かれた「県高校生ビブリオバトル大会」(県教委主催)で、大島高校2年の畑友一朗さん(16)が2年連続優勝した。同校の優勝は4年連続。本そのものの魅力はもちろんのこと、発表者のプレゼンテーション(説明)能力が大きな鍵を握る。大島高校の強さの秘密に迫った。(柿美奈)

 

■人を通して本を知る

 

 ビブリオバトルは2007年に京都大学で始まった。ルールは▽本を持ち寄る▽1人5分で本を紹介▽2分間の質疑応答▽聴衆が読みたくなった本に投票する、というもの。

 

 優勝するのはあくまで「本」。結果は「チャンプ本」として紹介されるが、勝敗の鍵となるのは言うまでもなく発表者の説得力。バトルを通し発表者の人柄も知ることができる。また発表する側もスピーチ能力が向上するとして注目されている。

 

 県高校生大会は今年で6回目。大島高校は初回から2年連続準優勝、以降4年連続で優勝している。今年は10校19人が参加し、大島高校からは1年の岡山志穂さん(小宿中出身)、2年の畑さん(同)、3年の橋口結さん(金久中出身)が出場。決勝は5人中3人が大島高校生となった。

 

■レジェンドOB

 

 大島高校でビブリオバトルを始めたのは9年前。今年は学年縦断で24ブロック(1ブロック約30人)に分けて行った。学年で読書量や表現力に差が出そうだが、国語科の角美穂教諭は「愛読書を思う熱量は同じ。1年生の下剋上(げこくじょう)もあり、緊張感が生まれた」と話す。

 

 レベルの底上げとなったのは全国大会にも出場し、今年卒業したOBの積風我さん(筑波大)のプレゼン。後輩たちに「ビブリオ・レジェンド」と呼ばれる。畑さんは「積さんが全校生徒の前で発表しているのを見てあこがれた」と話し、橋口さんも積さんの影響でバトル好きになったという。

 

 図書館司書の信島清野教諭は「1年時から全国レベルのプレゼンを見る影響は大きい。島っちゅならではの素直さで、それを継承していっているのが強さの要因では」と分析している。

 

■鍛えられる発表能力

 

 バトルの難しさについて、橋口さんは「最初は自分の主張ばかりして弁論大会みたいになってしまった」と話す。畑さんも「聴衆が知りたいことを意識する」とし、岡山さんも「内容をどこまで紹介するか悩んだ」という。さまざまな難しさはあるが、角教諭はそれこそが相手を意識して話す大事な機会だと解説する。

 

 大学入試にも有効な能力として期待されている。今年度からは、自分の意欲や主体的な学習姿勢を面接官にプレゼンする「総合型選抜」が始まる。角教諭は「いきなり人前で自分の意見を言うのは難しい。ビブリオバトルは自分の言葉で考えを表現する訓練になる」と期待を込める。

 

 バトルではあるが交友関係が深まるのもメリット。出場した3人は「本が共通の話題になり、島外の人ともすぐ打ち解けた。出場してよかった」と笑顔で語った。