奄美大島・徳之島 「世界遺産」へ再出発 推薦取り下げ、賢明な判断 今夏ならず、新目標20年

2018年06月02日

政治・行政

奄美大島、徳之島の各地に掲示されている「世界自然遺産」啓発看板。登録目標が2020年となり、掲げられ続ける=1日、奄美市名瀬の県大島支庁

奄美大島、徳之島の各地に掲示されている「世界自然遺産」啓発看板。登録目標が2020年となり、掲げられ続ける=1日、奄美市名瀬の県大島支庁

 政府は1日、国連教育科学文化機関(ユネスコ)に提出していた「奄美大島、徳之島、沖縄島北部および西表島」(鹿児島、沖縄)の世界自然遺産登録推薦を取り下げ、2019年2月までに推薦書を出し直すと発表した。奄美の関係市町村長や地元民間有識者らの声を集めた。無念さをにじませての「再出発」、安堵感をにじませての「慌てずじっくり」。ユネスコ世界自然遺産委員会の諮問機関・国際自然保護連合(IUCN)の「登録延期」勧告(日本時間5月4日)から間もなく1カ月。新目標「20年夏登録」に向けて動き出した。

 

 三反園訓知事はコメントを出した。登録延期の勧告を受けて推薦書の再提出を求めたことを挙げ「遺産価値を維持する取り組みを一層推進し、早期登録がなされるよう全力で取り組む」とした。推薦区域を見直せば登録の可能性は十分あるとの見方を強調し「国の決定は確実かつ早期の登録に向けた戦略的な判断だった」と理解を示した。

 

 奄美群島広域事務組合管理者の朝山毅奄美市長はコメントで、政府決定を「確実かつ早期の登録実現を目指すベストの判断」と評価。「IUCN勧告には登録を確実にするためのアドバイス的な内容も含まれており、全く悲観することはない。延長期間をさらなる課題解決、地元の体制づくりなど与えられた有益な期間と捉えたい」とした。

 

 大島郡町村会長の伊集院幼大和村長はコメントで、今夏の登録がかなわぬことが決定した無念さをにじませながらも「早期登録実現に向けた再出発と位置づけることができる」と評価。「世界に誇れる豊かな自然を守り伝えていくため引き続き普遍的価値の保全活用に必要な対策を検討していく」とした。

 

 元田信有宇検村長は「IUCNは島々の自然の価値は認めている。延期勧告は手続き上のことだと受け止めている。2年後の世界遺産委員会に向けて、島の自然の価値と世界自然遺産の意義をあらためて問い直し、希望を持ち群島民一丸になって登録実現に取り組みたい」と語った。

 

 鎌田愛人瀬戸内町長は「取り下げの事実を受け止め、今後は関係市町村が一体となって次の推薦書提出、世界自然遺産登録のチャンスに向け、受け入れ態勢などの課題をクリアしながら努力していきたい」と話した。

 竹田泰典龍郷町長は「推薦取り下げは決定したが、2年後の登録に向け国や県、地元市町村と協力していきたい。自然遺産に対する住民の意識醸成が図られていないとも感じていた。それについても引き続き取り組んでいく」と語った。

 

 高岡秀規徳之島町長は「地元として確実な遺産登録を要望していた。これまで登録を目指してきた中で、外来種の問題など地元として取り組まなければいけない課題も分かってきた。登録されるまでの期間、自然保護対策を進めたい」と話した。

 

 大久幸助天城町長は「確実な遺産登録に向けた第一歩だ。地元には猫対策やごみの不法投棄など、自然を保全する上で住民の理解を深めないといけない部分がある。さまざまな課題を解決する大事な期間をいただいたと思っている」と語った。

 

 大久保明伊仙町長は「取り下げ決定は、再提出への一歩。長期的なスパンで将来を見据え、指摘された課題をしっかり整えれば遺産登録は間違いなく実現できる。遺産価値が否定されたということではないと認識し、取り組みを」と語った。